アジア国債の魅力が増加

欧州と中国における懸念の高まりは、アジアの債券にとって追い風となりそうだ。経済規模の大きい国々が苦境に陥る一方、アジア各国の財政は強固で、そのソブリン債は資金の逃避先となっている。無差別の売りはどの国にも及ぶだろうが、インドネシア、日本、フィリピンの3カ国は強く抵抗できるだけの資質を備えている。

予想を下回る中国の経済指標とギリシャのユーロ圏離脱観測は、リスク資産からの脱出を引き起こした。投資家は世界経済の減速と、売りが売りを呼ぶ展開を恐れている。欧州経済の悪化がアジアに及ぶとすれば、1つの経路は欧州の銀行を通じたものだ。国際決済銀行(BIS)によると、欧州銀は昨年下期に少なくとも1358億ドルのアジア向け融資を引き揚げた。
アジアのソブリン債は成長減速とインフレ率低下、金利低下によって恩恵を受けるはずだ。中でも資金流出に左右されにくい国が最も安全だ。例えばインドネシアは国内総生産(GDP)に対する公的債務の比率が25%を下回っている。ドイツでさえその3倍の比率だ。インドネシアは対外短期債務が比較的少なく、他のアジア諸国に比べて欧州銀の融資への依存度がずっと低い。それでも10年国債利回りは米国債を4.7%ポイント上回っている。

日本国債は利回りが米国債より低く、政府債務の対GDP比率はギリシャの1.5倍に達するが、それでも安全性は他国より高い。日本国債の外国人保有比率は7%に届かないため、投げ売りの可能性は限られている。しかもデフレのため着実な需要がある。これとは対照的に、オーストラリア国債の外国人保有比率は80%だ。
最も意外な資金の逃避先がフィリピン国債だ。フィリピンは貧しいが、政府は短期対外債務の約6倍に相当する760億ドルの外貨準備を積み上げており、公的債務の95%を国内で賄っている。それなのにフィリピン国債利回りは米国債を4%ポイント上回っている。フィリピン国債を買うのはまだリスクが高い。通貨ペソをロングにしたいと思う人ばかりではないだろう。しかし世界の状況が悪化すればするほど、そのリスクは受け入れ可能に見えてくるかもしれない。