それでもギリシャ国債は事実上のでデフォルト

ギリシャ危機に対する第2次支援策について、欧州連合(EU)のユーロ圏17カ国が原則合意した。約1カ月後に期限が迫る国債の大量償還に何とか見通しが立ち、ギリシャのデフォルトが回避されたと報じられている。
一時は協議が迷走し緊張も走ったが、ひと息ついたともいわれている。これを受けて、為替市場にも安心感が出ているようだ。

はたして、ギリシャのデフォルトは避けられたのだろうか。結論からいえば、ギリシャ国債は事実上デフォルト状態だ。形式的にはデフォルトはないが、もうギリシャ国債は実際には取引されておらず、経済機能はなくなっている。
これを物語るのは、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)レートだ。既に100%を超えている。もうCDSに保険機能はなく、上がるに賭けるか下がるに賭けるかという博打になっている。
新聞では、ギリシャ国民にとって痛みを伴う財政緊縮策の動向が鍵だと書かれている。4月には総選挙もあるので、その動向は不透明としている。まあ、その通りだが、あまりにステレオタイプな報道だ。
財政緊縮策を実施した場合、経済は下向きになる。そのため、財政再建は当初の予定通りには進まず、予定より遅れる可能性が高い。となると、支援側のフラストレーションを高め、これから何度も欧州危機の火種になるだろう。

さらに、新聞では、ユーロ圏は同じ通貨なのにも関わらず、財政は統一されていないことを危機の原因と見る向きが多い。しかし、ノーベル賞を受賞した経済学者マンデルの最適通貨圏理論では、ギリシャなどの周辺国は最適通貨圏に入らず、そもそもユーロに加盟したことが間違いだ。
要するに、無理に周辺国まで同じユーロ通貨にするのではなく、経済変動が似ており経済構造が柔軟という最適加盟条件を満たした中心国だけが同じユーロ通貨を採用すればいい。
こうしてみると、経済原理を無視した政治的なユーロ拡大志向が招いた悲劇がギリシャ問題なのだが、表層的にみる新聞はそこが見えない。ギリシャもユーロでなく、古来の通貨であるドラクマであれば、為替調整で破綻問題をこれまで乗り越えてきた歴史がある。ユーロにとどまらせる無理強いは、支援を受けるギリシャ国民にとっても、支援をする他のユーロ国民にとっても好ましくない。
そのうち、厳しい財政緊縮策でギリシャ経済の立て直しが遅れるとともに、ギリシャを支援する他の国もギリシャの負担が足かせになって経済状況が悪化する可能性がある。そのうち第二のギリシャが出てくるかもしれない。その時ユーロは正念場を迎えるにちがいない。