今回も目立った成果のないG20

メキシコで開かれていた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は26日、欧州債務危機の収束と波及防止に向け、ユーロ圏の金融安全網の拡充を求めるとともに、それを前提に国際通貨基金(IMF)の資金基盤の増強を4月会合で具体的に協議することを確認する声明を採択した。声明では、世界経済と金融市場の動向について明るい兆候を指摘する一方、先行き下振れリスクの高さも明記。最近の原油価格上昇への懸念も表明した。

会合では、世界経済の最大のリスク要因と位置づけられている欧州債務危機の議論に多くの時間を費やした。G20は声明で、これまでの欧州の財政規律強化への取り組みや、欧州中銀(ECB)による積極的な流動性供給などを評価。一方で、欧州危機の収束、波及防止に向け、ユーロ圏による金融安全網の拡充が「現在進められているIMFの資金増強をめぐる議論に必要不可欠なインプットを提供する」とし、欧州による一段の自助努力が大前提との姿勢を明確にした。その上で、IMFの資金基盤の増強について「4月の次回会合でこの戦略の進捗状況を点検する」ことを確認。ブラジルのマンテガ財務相は、欧州がファイアウオールを強化し、IMFへの出資改革が承認されれば、G20は4月にIMFの資金増強に合意する可能性があると述べた。
前提となる欧州の金融安全網の拡充では、欧州金融安定ファシリティー(EFSF)と今年7月に発足する常設の欧州安定メカニズム(ESM)の上限引き上げが検討されている。ユーロ圏首脳は、両者を合わせた融資額の上限について、当面5000億ユーロとすることで合意しているが、現行のEFSFの融資可能額2500億ユーロと合わせて7500億ユーロに拡充すべきとの意見もある。安住淳財務相は25日の会見で、初日の討議において欧州に金融安全網の規模拡大を求めたことを明らかしている。ドイツのショイブレ財務相は安全網の拡充について「3月中に決断を下す。IMFがファイアウオールについて決定を下すワシントンの春季会合に間に合うだろう」と断言した。

ガイトナー米財務長官は、欧州の継続的な努力を評価する一方で、「G20では、IMFが欧州ファイアウォールの強化を補完できないとの認識で幅広い合意を得た」と指摘。欧州の計画がさらに明らかにならなければ、「IMFは財源問題で前進できない」と強調した。米国はIMFへのさらなる資金拠出に対して当初から慎重な立場だが、ガイトナー長官は、あらためて「(IMFの資金増強を)議会に要請するつもりはない。それが必要だとも、望ましいとも感じない」と明言。オズボーン英財務相も「IMFの財源について検討する用意があるが、それはユーロ圏が資金を出してからの話だ。まだユーロ圏から資金を見せられていない」と引き続き欧州の取り組みを注視していく考えを示している。
日銀の白川方明総裁は、IMFの資金増強を次回会合で協議することになったことについて「一定の前進」と評価。ただ、欧州危機の解決には経済、財政、ガバナンスの改革が必要とし、「資金基盤だけでなく、3つのことがいずれも着実に前進していくことが大事だ」と指摘した。世界的に中央銀行が景気支援を目的に金融緩和を進める中、「(中銀が)時間を買っている間に、こういうことをしっかりやっていくことが大事だ」とし、根源的な問題に地道に対応していくことが不可欠と強調した。

今回のG20は、ギリシャに対する第2次支援策が合意されるなど欧州危機が小康状態にあり、市場が比較的、落ち着いている中で迎えた。声明では、世界経済について「最近の経済動向は、緩やかな世界的な回復の継続と国際金融市場におけるストレスの緩和を示している」と市場の緊張感が一頃に比べて和らいでいるとの認識を示した。一方で「2012年の成長見通しは緩やかなものであり、下方リスクは引き続き高い」とも指摘。国際金融市場の動向についても「ボラティリティは下がってきてはいるが、なお総じて高止まりしている」と引き続き警戒が必要との認識を示した。
ドラギECB総裁は、欧州経済に改善の兆候が出ていると述べるとともに、金融市場でも「昨年は大部分で事実上、閉じていた債券市場が再び始まっており、かなりの発行もある。最初に欧州市場を避けた米マネーマーケットファンド(MMF)はエクスポージャーを増やしつつある」と説明。「(昨年11月の)カンヌサミット時よりも欧州は安全になったというのが一般的な見方だ」と前向きな兆しを強調した。

声明に為替への直接的な言及はなかったが、財務省の中尾武彦財務官は「日本がこれまで主張してきた、為替の過度な変動はよくないという部分は十分入っている。そうした考え方は国際社会で共有されている」と指摘。欧州危機の小康などを背景に、為替市場ではこれまでの過度な円高の修正が進んでいるが、同財務官は「引き続き緊張感を持って市場動向を注視し、適切に対応していくという考え方に変わりはない」と語った。
また、G20は最近の原油価格上昇について懸念を表明。声明において「原油価格の上昇リスクを警戒している」とし、「産油国の十分な供給に対するコミットメントを歓迎する」ことを盛り込んだ。