日本のFX投資家は株取引に鞍替え?

外国為替証拠金(FX)取引で、日本の個人投資家が高金利通貨に対して売り圧力を強めているようだ。
年初から高金利通貨高・円安が進み高値警戒感が強まっているためで、利益確定の売りが相次いでいる。では、個人が高金利通貨の売却を通して手に入れた利益はどこに向かっているのか。関係者の間で広がっているのは、株式市場に流れ込んでいるとの見方だ。FX投資家は株式投資にもそろりと戦線を広げているという。

東京金融取引所が運営する「くりっく365」。2月29日の売買動向をみたFX関係者の間に衝撃が走った。ニュージーランドドル円(キウイ円)の取引全体に占めるキウイ買い円売りの未決済残高(建玉)の比率が48.3%と、データを公表している06年7月以降で初めて50%を下回ったためだ。
ニュージーランドは日本に比べて金利が高く、FX投資家はキウイ買い円売りの持ち高を抱えると、金利差に相当するスワップポイントを得ることができる。中長期の観点で資産運用する投資家のキウイロングの比率は買い越しを意味する50%を上回るのが常だったが、その構図が初めて崩れた。

高金利通貨のもうひとつの代名詞でもあるオーストラリアドル(オージー)。オージー買い円売りの建玉は年初から円安に伴って減少を続け、29日は昨年3月31日以来、11カ月ぶりの低水準に沈んだ。南アフリカランドなども傾向は一緒だ。年初以降、投資家のリスク許容度が改善し高金利通貨は上昇傾向にあった。さらに足元ではドル高円安が進み、高金利通貨高円安が加速している。短期的な過熱感を警戒した個人が「値上がりした場面で売りを出し、利益を確定している」と外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は語る。

個人の懐に転がり込んだマネーはどこに向かうのか。「ドル円」取引などに流入しているとの見方があるが、FX取引は昨年夏に証拠金倍率(レバレッジ)の規制が強化された影響から全体的にみて売買は盛り上がっていない。
「持たざるリスクを意識して株式に流入している」。こう指摘するのは、岡三オンライン証券の武部力也投資戦略部長だ。円安・ドル高などを手がかりに日経平均株価は上昇基調を強め、1万円の大台が視野に入ってきた。「株式はFXよりも変動率が高く、一段の利益の上積みを目指す個人が多い」とマネックス証券の福島理マネジャーは話す。「ミセス・ワタナベ」の通称で呼ばれるFX取引の個人投資家が、今後株式市場でじわじわと存在感を高める可能性がでてきた。