オーストラリアが景気減速気味

オーストラリアで経済の先行き不安がジワリ広がっている。景気減速を示唆する経済指標が相次いでいるためだ。市場では景気下支えのために、豪準備銀行(RBA)が4-6月期に追加利下げするとみる見方が多い。

豪州の市場関係者は先週、2つの大きなニュースに揺れた。1つ目は豪統計局が7日発表した11年10-12月期実質国内総生産(GDP)。前期比0.4%増と3四半期連続のプラスだったが、伸び率はロイター通信がまとめた市場予想である0.8%増の半分程度にとどまった。特に個人消費は前期比0.5%増と7-9月期(1.2%増)からブレーキがかかった。
2つ目は8日発表の2月の雇用統計。失業率が5.2%と前月比0.1%悪化したばかりか、就業者数は同5,000人増の市場予想に反して、同15,400人減った。そのすべてがパートタイムの減少だ。
パートタイム従業員の多い観光や小売部門での人員削減が進んだとみられる。ウエストパック銀行のチーフ・エコノミスト、ビル・エバンス氏は、「失業率が今後数四半期で5.75%に悪化する」と予想する。

GDPと雇用統計の発表に先立つ6日、RBAは政策金利を年4.25%に据え置くと発表した。据え置きは2月に続き2回連続で、スティーブンRBA総裁は声明で、欧州債務危機をめぐる金融市場の心理が改善していると指摘し、現行の政策金利の水準が「今のところ妥当だ」と述べた。一方で豪州経済の減速感が強まった場合は、追加利下げに踏み切る用意があると強調した。
市場関係者の注目を集めたのはスティーブン総裁が声明の中で「(豪州経済の)構造的変化」に2度言及したことだ。構造的変化とは、豪ドル高の定着やそれに伴う国内産業への影響を指している。

豪ドル相場は足元でも、1豪ドル1.06米ドル前後。1.10米ドル付近と過去最高値圏で推移していた昨夏と比べると、騰勢は一服したものの、なお高水準で推移している。豪ドル高は輸入価格を下げて物価上昇圧力を相殺する効果がある一方、輸出企業の業績を圧迫している。対応しきれない企業が相次いで人員削減を打ち出すなど負の影響も表面化してきた。
これまでは製造業が目立っていたリストラが様々な業種に広がっている。保険最大手、インシュアランス・オーストラリア・グループ(IAG)は今後3年間で参加企業の従業員約600人を削減する。
産業別の格差も鮮明で、10-12月期のGDPでも鉱業が前期比で同0.7%増と比較的堅調を維持する中、建設業は同2.4%減、ホテルや飲食業は同2.2%減と落ち込みが目立つ。
内需のテコ入れや豪ドル高の修正に向け、市場では少なくとも6月までにもう一段の利下げがあるとの見方で一致している。