外貨投資が激減の個人投資家

なぜなのだろうか。ここにきて個人投資家が外貨資産に対する投資を縮小している。今年は先週末の16日時点で、外貨建て投資信託の売越額が1兆円を超え、外国為替証拠金取引(FX)での外貨買越残高も昨年末比5割以上減った。昨夏以降の「超円高」で損失を抱えた個人は、今年2月以降の円安局面でも、損切りなのか利益確定なのかは定かでないが、売りを優先した。まして、新興国で利下げが相次ぎ、高金利狙いの投資も手がけにくくなっている。

外国為替市場では今年に入り円安傾向が鮮明だ。主な通貨の対円相場の年初来上昇率(16日時点)をみると、ドルは8%、ユーロは10%、オーストラリアドルとブラジルレアルは12%になった。昨夏以降は欧州財政不安などを背景に「安全通貨」と目される円にマネーが流れ込んだ。足元では米景気の回復期待や欧州不安の一服、日銀の追加金融緩和などを受けて円相場は下落基調に転じている。
個人にとって円安は、保有する外貨資産の価値上昇につながるというのに、外貨投資はさっぱり盛り上がらない。米ステート・ストリート銀行集計の外貨建投信の売買動向で、昨年9月以降は月数千億円規模の売り越しが続き、円安が進んだ2月も約3200億円、3月も16日時点で約3000億円の売り越しになった。今年の累計売越額は約1兆200億円。前年1~3月が約9300億円の買い越しだったのに比べ、投資意欲の冷え込みぶりが鮮明だ。

09年1月に登場し、運用通貨を選べる仕組みで個人の人気を集めた「通貨選択型」の投信も、今年2月に月次で初めて売り越しを記録した。特に高金利のブラジルレアル建て投信などから資金が流出している。
FXでの外貨投資も低調。東京金融取引所のFX「くりっく365」では、個人の外貨の対円買越残高は16日時点で昨年末より57%少ない水準だ。ドルと豪ドルの買い越し規模は縮小し、ユーロは1月半ばから売り越し傾向にある。特に2月の日銀の追加緩和前後から外貨売り・円買いの動きが加速した。

個人が外貨投資に慎重なのは、昨夏の1ドル80円を超す円高で損失を抱え、投資余力が細った人が多いため、という見方が多い。「個人は円安が続くかどうか見極めきれず、まだ外貨買いに動きにくい」(外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長)という指摘もある。
新興国で相次ぐ利下げも逆風だ。ブラジルは今月上旬までに5回連続の利下げに動き、アジアのなかで相対的に高金利とされているインドネシアも2月に利下げした。高金利の魅力や通貨高の期待が薄れ、個人はこうした国の資産で運用する投信の購入に消極的になっている。

その一方で、個人の人気を集めているのは、なぜか円安で価値が下がっている円建債券。1-3月は個人向け国債の発行額が前年同期比2.5倍になり、調査会社のアイ・エヌ情報センターによれば、個人向け社債の発行額(12日時点)も3.2倍になった。外貨建て投信などに比べ利回りは低いが、為替リスクを敬遠する個人の需要が根強いようだ。