ユーロ円相場、11年8か月ぶりの安値圏

午前の東京外国為替市場で、ユーロ円は95円を割り込み、水準としては11年8カ月ぶりの安値圏での取引となっている。
今回のユーロ安はスペインのバレンシア州が中央政府に支援を求める方針を明らかにしたことや、スペイン政府が13年の経済成長率予測を0.5%に引き下げたことなどがきっかけだが、「正直言って、東京勢はお手上げ状態」(運用会社)だとされ、ユーロドルでは売りも買いも手が出ない状況だという。

こんな状況に対して、市場関係者は以下のような見方をしている。
野村證券金融市場調査部チーフ為替ストラテジストの池田雄之輔氏
ユーロ円での円売り介入の可能性はないとみている。介入を実施する際には相手側の一定の理解が必要だが、金融、財政とも追加的な政策余地が限られる欧州にとって、通貨安は有効な政策ツールであり、通貨安のメリットを打ち消すようなユーロ買い/円売り介入を欧州中央銀行(ECB)が許容するとは考えにくい。
さらに、対ドルでユーロはファンダメンタルズを逸脱した低水準にあるとは言えない。ユーロをめぐるリスクは良い意味で変質してきている。つまり、ユーロには慢性病との闘いが残されているものの、ギリシャの無秩序なユーロ圏離脱のような突然死のリスクは後退している。
こうした環境下で、本邦当局がユーロ円の下落による株価や企業マインドへの悪影響を懸念するとすれば、日本サイドに追加緩和の余地が出てくるだろう。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券シニア為替・債券ストラテジストの植野大作氏
欧州債務懸念の再燃で、ユーロドルを中心に大きく売られ、株が下がり、クロス円が売られるというパターンとなった。
ユーロドルについては、発足来の安値と高値の半値押し水準が1.2130ドル付近となるが、今回はこれを下回るレベルまで差し込んだ。債務問題への当局の対応は市場が要求する速度では進まないとみており、ユーロ/ドルは下落含みの展開になりそうだ。
もっとも、欧州中央銀行(ECB)が時間稼ぎで追加金融緩和や流動性供給に踏み切れば、多少リスクオンになる可能性もある。足元のユーロは景気は悪い、債務問題の解決には時間がかかる、金融緩和もありそうと、売る理由しかない通貨になっているが、そういう通貨は方向は正しくても、スピード違反をしている可能性がある。シカゴIMM通貨先物の取組は大きくユーロショートに傾いており、債務問題で多少でも進展がみられれば、いったん買い戻されても不思議はない。方向としては今後1.20ドル程度に向けて徐々に下がって行く展開になるとみているが、一直線に下がって行くというよりは、行ったり来たりしながらジリジリと下がるイメージだ。
そうなった場合のユーロ円は、仮にドル円が78.50円程度だとすると、ユーロドルが1.20ドルまで下がれば、単純な掛け算で94.20円になる。よって、ユーロドルがじりじりと下がることを前提とするならば、ドル円がいますぐ上がって行くということが想定しにくい中で、95円割れが定着してしまう可能性がある。
ドル円は、あれだけ弱い雇用統計が3カ月続いたり、小売売上が3カ月マイナスになったりと、明らかに弱いデータが出ているにもかかわらず78円レベルと、6月1日の77.60円台よりもまだ上の水準にある。割と底堅いのではないか。

三井住友銀行市場営業統括部チーフ・エコノミストの山下えつ子氏
今回のユーロ安の契機はスペインの話。銀行への資本注入で収まったように見えたものが、別のところから懸念要因が出てきた。このほか、欧州中央銀行(ECB)がゼロ金利にしていることで、金利面からもユーロ安圧力が掛かっている。
ユーロ円が欧州の問題でジリジリと下がる地合いは続きそうだが、米国の方でも景気が減速している。ユーロドルでみたときに、必ずしもユーロが一方的に売られる局面ではないだろう。ユーロ円の導入来安値88.80円の更新は長い目で見てないわけではないが、一気にこのままユーロ円で円高が進むというよりも、ユーロドルでみたときにドルの下落というのもあり、ユーロ円の急激な下落は想定しにくい。
今日だけをみれば、ユーロ安が注目されて欧州中心の動きのように見えるが、全体的な局面を見れば米国の話もだんだん出てきて、欧州の話だけで為替相場が決まるということもないだろう。ユーロ/円が水準では注目されているが、気が付くとドル円でもじりじりと下落している展開になりそうだ。対ユーロ、対ドルで円高が進む結果、日本の当局としては介入含みで臨まざるを得ないだろう。