シャープ時価総額激減で買収対象のピンチ

シャープの株価は24日、前日終値から1.7%下落し、年初来安値を更新した。時価総額は約3200億円まで縮小し、買収対象の危険水域に入りつつある。このため、同社では初めてとなる、国内外で数千人規模の人員削減を行うなど、収益力の回復に向けた危機対応を余儀なくされている。

 

シャープの株価は24日の終値で289円。年初来安値を更新した23日終値から1・7%下落し、台湾の鴻海精密工業との資本・業務提携の発表直後からほぼ半分に値を落とした。

これに伴い、時価総額は約3200億円にまで縮小。他社が発行済み株式の過半数の取得を目指して株式公開買い付け(TOB)を実施する場合、2割前後のプレミアムを考慮しても約1950億円の資金で足りるため、企業買収の恐れが現実味を帯びてきた。市場関係者は「株価が危険水域に入った」と指摘した。

だが、業績回復のカギを握るデジタル家電の先行きは不透明だ。電子情報技術産業協会(JEITA)の統計によると、今年1-6月の薄型テレビの国内出荷台数は前年同期比69.6%減の345万5000台と初めて減少に転じた。

 

一方で小型液晶を使うカーナビゲーションシステムの国内出荷台数は同46.3%増の302万2千台に伸びた。だが、エコカー補助金などにより新車販売が好調なことを反映しており、補助金打ち切り後の失速は避けられない情勢だ。

また、収益の柱の一つと位置づける太陽電池は価格競争が激しく、特に薄膜系は価格下落が大きい。シャープは葛城工場(奈良県)で薄膜系太陽電池の生産を停止するなど、収支改善策を急ぐ。

シャープは関西系の電機大手として関西を中心に雇用維持に貢献してきたが、「聖域」に踏み込まざるを得ないほど経営環境と事業構造が激変した形だ。ある証券アナリストは「人員削減に伴う追加の特別損失が第2四半期以降に計上される可能性がある。悪材料が出尽くしたとは考えられない」と指摘している。