6月鉱工業生産指数もマイナス

経済産業省が30日発表した6月鉱工業生産指数速報(05年=100、季節調整済み)は前月比0.1%低下の92.1となり、3カ月連続の低下となった。国内の自動車生産の息切れと輸出減速が重なり、生産水準も震災後の復旧期に入ってから最低水準となった。
この結果4-6月は、震災直後の昨年4-6月以降初めて前期比低下に転じた。先行きも7、8月は、夏場の節電を兼ねた夏季休業前の作りこみによる上昇と低下の予測となり、生産は全体として横ばい傾向となっている。

6月はロイターの事前予測調査では前月比1.5%上昇と予想されていたが、発表数値は予想を下回って低下となり、生産の停滞が続いていることが明らかとなった。
4、5月の生産が2カ月連続で低下していたのは、季節調整の影響が大きかったとみられていた。自動車生産のエコカー補助金切れが近づき、生産息切れが低下が全体を押し下げただけで、他の業種には目立った需要減の動きは出ていなかった。
しかし6月の生産をみると、自動車ではアジア、オセアニア向けの出荷が減少するなど輸出が振るわなかった。電気機械でも輸出用太陽電池モジュールの在庫調整などから低下、鉄鋼業はロシアやオーストラリア向けの圧延鋼材や国内自動車向け普通鋼鋼帯などが低下。エコカー補助金切れだけの押し下げではないことがうかがえる。
一方で、電子部品・デバイスはアジア携帯向けメモリや中国タブレット向け大型アクティブ型液晶素子などが好調で上昇。一般機械も電力向け蒸気タービンなどが好調だった。
こうした結果、4─6月の生産は前期比2.2%低下し、昨年震災後の4─6月以来の低下に転じた。指数の水準も昨年6月を下回り、復興期としてはさえない展開だ。一般機械や情報通信機械、電子部品・デバイス、輸送用機械といった加工組み立て型産業の輸出不振を補うだけの国内需要の力強さが出てきていない。

先行きの生産予測を見ると、7月は前月比4.5%上昇、8月は0.6%低下の見通しとなった。7月は情報通信機械や電子部品・デバイスが、新製品や年末商品向けの作りこみなどから2ケタ増を計画していることが全体を押し上げた。一方で、8月は節電で夏季休業をとる業種なども目立ち、低下する見通しとなっている。
みずほインベスターズ証券のチーフマーケットエコノミスト、落合昂二氏は、6月鉱工業生産指数速報が予想外のマイナスとなったことについて「期待外れの内容だ」と指摘。7月の予測指数が同4.5%上昇と強めの数値となったことについても「希望的観測なのか、生産後ずれなのかはっきりしないが、これまで予測に対して実績が下振れてきた経緯を踏まえると期待しにくい」との見方を示した。
農林中金総研・主任研究員・南武志氏は「2年前と同様、補助金政策の終了後は大きな反動減が出る可能性が高く、それに先んじて自動車メーカーは減産体制に入っている。すそ野が広い業種であることもあり、秋以降、生産の停滞色が強まる可能性がある」と指摘。同じく秋以降に想定される中国向け輸出の持ち直しで生産停滞を相殺できるかどうかに注目している、と述べた。