まだまだ保険料は下げられるはず

「まだまだ保険料は下げられる。保険料算出用のデータを見直せば余裕だろう」保険相談室代表で、(株)メディカル保険サービス非常勤顧問も務める後田亨氏は言う。
一般に、インターネットで販売される保険が低料金である理由については、保険料に含まれる「諸経費の低さ」にスポットが当たる傾向が強い。
しかし、もっと保険料が下がる余地があるはずだと思えるのは、そもそも、保険料を算出する際に用いられる「死亡率」が、かなり高めに見込まれているからだという。

保険会社が保険料計算に用いる死亡率は、厚生労働省所管の人口統計に基づく数字より低いはずだと、一般的には思われている。
たとえば、「勤務先の人員削減業務を担当していた頃、ストレスから1週間くらい睡眠導入剤を使ったことがある」という人が、「死亡保険」にも「医療保険」にも加入できない、といったことがあるからだ。保険会社に「うつ病になりやすい人かもしれない。自殺の恐れもある」などと判断されるからだろう。
契約前に、このような「診査」を行っているのだから、通常、保険に加入できる人は健常者ばかりだろう、であれば、保険料計算の基礎になる死亡率は、厚生労働省のデータよりも低くて当然と考られるからだ。

ところが、現実は違っている。厚生労働省の「第20回完全生命表」によると、40歳の男性が10万人いる場合、1年間に143人が亡くなることになっているが、保険会社が「死亡保険」用に使っている「生保標準生命表2007」でのデータでは148人だ。
一方で、「医療保険」「個人年金保険」といった、顧客が長生きすると給付金の支払いが増える商品においては、厚生労働省のデータより生存率を高く見積もったデータが使用されている。
つまり、「死亡保険」では「短命な人が多い」方向に補正されたデータから高めの保険料が算出され、「医療保険」や「個人年金保険」では、逆に「長生きする人が多い」からと、やはり高めの保険料が算出されている。
保険会社側の言い分としては「経営の安全度を考慮している」というものが予想されるが、素朴に「やりすぎ」と感じざるを得ない。
各保険会社が、より「現実的なデータ」に基づく保険料率を設定することで、価格競争が進むことを望む。