変額個人年金保険でお金が殖えるわけがない

「検討に値しないことがすぐにわかる。そういう意味では素晴らしい」。銀行の窓口で、ある外資系保険会社の「変額個人年金保険」のパンフレットを手にした感想だ。

特定の保険会社に限ったことではない。「変額個人年金保険」のパンフレットや提案書を見た時には、いつも同じ感想を持つ。知る限り、貯蓄目的で案内される保険の中で、契約にかかる「コスト」が明らかにされている珍しい商品だからだ。

今回入手したパンフレットでも、裏表紙を1枚めくって「諸費用」という項目を見るだけでわかる。

 

そこには

(1)契約時に「契約初期費」として、一時払い保険料の5%

(2)積立期間中および年金支払期間中に「保険関係費」として、積立金額に対して年率2.95%

(3)積立期間中および年金支払期間中に「運用関係費」として投資信託の純資産総額に対して、年率0.22%程度の費用が保険料から差し引かれる

――ことが明記されている。

 

運用関係の仕事をしている人に、これらの費用について話したところ「すごいね、どうやってお金を殖やすつもりなのかな?」と笑われた。普通に考えると難しいだろう、というわけだ。

たしかに、契約時に1000万円の保険料を一括払いした時点で、950万円まで元本が小さくなり、その後、毎年3%の運用実績があげられたとしても、「保険関係費」と「運用関係費」が計3.17%引かれて、マイナス0.17%になってしまう仕組み。

パンフレットには、あくまで「イメージ図」であることを断ったうえで、積立期間中に一時払い保険料の120%が年金受取総額として保証されるケースが記載されていたりするが、現実的とは言い難いイメージであって、子細に見るまでもないと思える。

同時に、こうした即断が可能になる情報が明らかにされていることは「とても助かる」と感じることもまた事実。商品を理解するために費やす時間も大きなコストだからだ。

 

今のところ、「変額個人年金」のように、契約に要するコストが明示されている保険商品は、ほとんどない。資産運用目的で案内される保険のみならず、コストの多寡は、商品価値を判断する上で重要なポイントになるはずだから、不可解かつ不親切なことだと思う。

では消費者はどうしたらいいのだろうか。「怪しい商品」を見分ける際、念頭に置いていることは一つだけ、それは「仕組みがわかりづらい商品は、基本的にダメ」ということだ。

今回、取り上げた保険にも「基準保証金額」「ロールアップ保証金額」「ラチェット保証金額」など、一見しただけでは理解不能な用語が目立つ。その時点で、「用語の理解に努める必要はなさそうだ。諸費用から確認しよう」と思ったもの。

たとえば、「基準保証金額」については、先の「イメージ図」に、積立期間1年の場合、一時払い保険料の最低101.5%保障とあります。「1年で1.5%の利息が付くのならば預金より断然有利では?」と反応する向きもあるかもしれない。

 

ところが、積立期間と年金受取期間の合計期間は25年という決まりがあるので、1年で1.5%お金が殖えたとしても、24年間にわたって分割でしか受け取ることができません。25年かけて100万円が101万5千円になるようなもの。これのどこが喜ぶべき話なのだろうか。

他の用語の説明は省くが、「こんなものだ」と言い切っていいだろう。

総じて、仕組みがわかりにくい商品は、消費者にとって「割に合わない買い物」であることを隠すために、余計な手間暇がかかっているのだと考えるのが妥当だ。

もちろん、余計にかかる手間暇は、価格に反映されているはず。君子危うきに近寄らず、が一番に違いない。