新興国各国で電力が不足

新興国を中心とする各国で夏場の電力不足が深刻化し、国民生活に大きな混乱が起きている。エジプトでは9日に大停電が起き、地下鉄がストップするなどのトラブルが続発。7月末にインドで起きた大停電は約6億人に影響した。韓国でも8月6日の気温上昇で、大停電寸前の状態に追い込まれている。背景には経済発展に伴う電力需要増に発電所などのインフラ整備が追いつかないことや、原子力発電所への逆風があり、同様の事情を抱える中国にも警戒感が広がっている。

 

AP通信によると、エジプトの首都カイロでは9日朝、広範囲にわたって停電が発生。地下鉄の2路線が1時間以上運転を停止し、乗客が線路上を歩いて移動するなどの混乱が生じた。気温が40度を超えるなか数時間も停電が続いた地域もあり、冷蔵が必要な食料や医薬品が使えなくなるなどの影響も出た。

エジプトでは今夏、気温上昇とともに停電が頻発している。電力需要の急増や送電網のトラブルが原因とされるが、特定には至っていない。閣僚の一人は地元紙の取材に「高圧線からの盗電が電力不足を悪化させている」とも答えている。

 

またインドでも7月30、31の両日、電力需要の増加が原因とみられる大停電が起きた。31日には炭鉱のエレベーターが停止して作業員が一時的に地下に閉じ込められるなど、全28州のうち18州とデリー首都圏などの約6億人に影響が及んだ。インドは過去10年間で発電能力を約40%引き上げているが、それでも急増する電力需要には追いついていない。

 

一方、韓国では原発の運転停止が電力供給に影を落としている。蔚珍原発4号機は昨年9月に伝熱管の破損が見つかり、再稼働できない状態が続く。古里原発1号機は3月、全電源喪失事故を隠していたことが発覚し、運転を停止した。

こうしたなか今月6日には気温上昇を受けたエアコン使用などで電力需要が増え、電力供給の余力が4%を下回った。政府や電力会社が節電を呼びかけて事なきを得たが、全国約160万戸に影響が出た昨年9月の大停電の再来となりかねず、政府は急遽、古里原発1号機の再稼働を決めた。

 

各国で相次ぐ電力危機に、慢性的な電力不足が続く中国では警戒感が高まっている。中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報のウェブサイトは2日、論説「インドの停電がもたらす中国への教訓」を掲載。国民生活向上のために電力供給を倍増させる必要がある一方、火力発電には石炭や原油の確保という制約があり、東京電力福島第1原発事故後は原発建設も難しくなっているとし、「中国が進む成長への道は狭まっている」と指摘している。