韓国市場は所詮脆弱

韓国の李明博大統領は韓国が不法占拠している島根県の竹島に足を踏み入れたあと、日本の国際社会での影響力は「昔と同じではない」と述べたという。日本の国力の弱体化を見透かした発言である。韓国のリーダーの増長ぶりを見過ごすと、韓国側はますます日本を見下すようになり、日韓関係は悪化の一途をたどるだろう。日本側としては冷徹に経済力の現実を韓国側に知らしめる必要がある。

 

韓国の対日本円ウォン安容認政策が韓国企業の国際競争力と株価を引き上げる一方、日本企業の競争力弱体化と日本株安を招いてきたという傾向がある。一方が浮上すれば、他方が沈む「ゼロ・サム」ゲームなのだが、韓国側にとっては危険と隣り合わせである。韓国の金融市場は外国からの短期資本流入に大きく依存しており、いったん資本流出が始まり歯止めがかからなくなると、ウォン相場が暴落しかねない脆弱さを持っているからだ。この構造は97年から98年にかけてのアジア通貨危機当時から一貫している。

韓国の対外短期債務の国内総生産(GDP)比はアジア通貨危機の後、国際通貨基金(IMF)が提示した厳しい緊縮政策を受け入れて急減し、06年あたりから急速に上昇を続けた。経済が輸出主導でめざましい復興を遂げるにつれて、欧米の金融機関からの資金が大量に流入してきたからだ。

 

リーマン・ショックを受けても、韓国はウォン安誘導政策をとって日本企業に対して競争力で優位に立ち、外部からの資本流入が続いた。しかし、10年春のギリシャに始まるユーロ加盟国の債務危機に伴い、ドル不足に陥った欧州系金融機関が韓国や新興国から短期資本を引き上げるようになり、11年秋には浦項製鉄など韓国の大手企業は外貨不足に陥った。

同時に、李明博大統領と野田佳彦首相は同年10月、通貨交換枠をそれまでの130億ドルから700億ドルへの拡大で合意した。日本側は窮地に立った韓国側の求めに応じた。韓国は国際性に乏しいウォンを刷って国際通貨である円やドルと交換できる「おいしい」話である。韓国の対外短期債務は1360億ドルに上るが、その半額相当を難なく日本から調達できる。

 

この協定があるおかげで、韓国はウォン安を放置しても、ウォン崩落は避けられる。前述の日韓「ゼロ・サム」ゲームもお人よし日本の協力なくして成立しない。スワップ協定は10月には期限が到来する。李大統領竹島上陸当時は「金融協力維持」を言明していた経済音痴の野田政権も、最近では国内世論に押されて「スワップ枠縮小の検討」を勇ましそうにいい出した。

しかし、国家戦略というものが野田政権にはそもそも不在である。押っ取り刀で金融手段を取り出そうとしても、国際金融市場の波乱を嫌うIMFや米国から牽制されると、腰砕けになってしまうだろう。