円売りユーロ買い介入も検討されそうな状況

週明け9日のオセアニア外国為替市場でユーロが対円で下落、一時1ユーロ97円28銭をつけ、約11年ぶりの円高ユーロ安を更新した。欧州債務危機をめぐる不安が根強いことから、ユーロ売りが拡大し、相対的に安全資産とみなされている円が買われた。
債務危機解決のめどがたっていないことから、当面はユーロが買われる展開は難しいとの見方が強まっている。9日にはドイツで独仏首脳会談が開催されるが、結果次第ではユーロ売りが一段と加速する可能性もあるという。

この動きが続くようだと、欧州向けの輸出が多い日本の製造業などには打撃となり、円売り介入などの対応を政府に求める声が強まる可能性が出てくるかもしれない。
第一生命経済研究所の永浜利広主席エコノミストの試算では、対ユーロで1%円高が進めば、自動車や電機など日本の製造業に0.15%の減益要因になる。
市場が注目するのは、日本政府が単独で対ユーロでの円売り介入に踏み切るかだ。今のところ政府は慎重で、安住淳財務相も6日の会見では「(ユーロは)長期的に見なければならない」と述べるにとどめている。

慎重姿勢の背景にあるのは、米欧の先進国が「介入は市場操作にあたる」と強く反対していることだ。
ただ、欧州債務危機の解決にメドが立たず、1ユーロ90円台へ定着すれば、産業界などから介入に踏み切るよう求める声が強まる可能性は高い。日銀にも「大胆な追加緩和で市場に出回る円を増やし、価値を下げ円安に誘導すべきだ」(永浜氏)との要求が強まる可能性がある。
東日本大震災の復興需要などから、政府は平成24年度の実質成長率を2.2%に達するとみる。しかし為替問題での対応が後手に回れば、こうした回復シナリオ「も捕らぬ狸の皮算用」なりかねない。今後、政府も欧米各国政府の顔色を見ながら難しい調整をすることになりそうだ。