CESで日本メーカの存在感はほとんどなし

米ラスベガスで10日開幕した世界最大規模の家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」は、テレビ市場を席巻する韓国勢が有機ELなどの新機軸を打ち出し、中国市場首位の海信集団(ハイセンス)も裸眼3Dテレビを参考展示した。先行する韓国勢、猛追する中国勢に対し、テレビがお家芸だった日本の存在感はもはやほとんどない。

ハイセンスのブースに、メガネなしで3D映像を楽しめる56型の裸眼3Dテレビが登場した。画像の立体度合いなど完成度は高い。東芝などが商品化で先行してきた裸眼3Dテレビに、早くも追いつこうとしている。ハイセンスは昨年3月に日本市場でテレビ販売を始めており、「販売は好調。今年は冷蔵庫も投入したい」(アジア地域責任者)と攻勢を狙う。
会場内でもっとも注目を集めるのは、韓国サムスン電子とLG電子が公開した世界最大の55型有機ELテレビで、両社とも年内の市場投入を表明する。省エネ性が高く画質も鮮明な「ポスト液晶テレビ」だ。とりわけLGの展示品は段ボール紙程度の薄さ4ミリで、「理想の壁掛けテレビ」(幹部)とアピールする。

日本メーカーも巻き返しに必死で手をこまねいているわけではない。パナソニックの大坪文雄社長はこの日、有機ELテレビを来年度以降に北米などで発売する方針を表明した。ソニーもLED光源の55型新型ディスプレーを出品。有機EL並みの画質で、液晶テレビよりも薄いのが特長だ。
だが、韓国勢には数千億円規模の大規模投資で開発を進め、猛スピードで新技術を製品に仕上げる瞬発力がある。メリルリンチ日本証券の片山栄一マネージングディレクターは「日本の復活には、韓国企業ができないものをつくる道しかない」と指摘する。

CESに出展しなかった米アップルが、年内にも本格的なインターネット対応テレビを商品化するとの観測も浮上する。ソニーのハワード・ストリンガー会長兼社長は「われわれはすでにゲームの最中であり、競争に直面している」と危機感をあらわにする。
スマートフォン(高機能携帯電話)やタブレット端末で市場をリードしてきたIT業界の巨人がテレビ市場に殴り込みをかければ、劣勢の日本勢にはさらなる脅威になる。