米国市場における3つの100ドル

13日のニューヨーク株式市場は、フランスなどの格下げが近いとの観測に加え、米大手銀JPモルガン・チェースの低調な昨年10-12月期決算が重荷となり、下げ渋った湯用には見受けられたが、金融株中心に売りが広がった。
日本経済新聞電子版では、この日の相場にいついて、3つの「100ドル」がキーワードだったとまとめている。

ひとつ目は米金融大手ゴールドマン・サックス(GS)の株価が再び100ドルを割ったことだ。昨年売り込まれた反動から年明け以降は戻りが目立ち、前日に「優良企業の証し」とも言える100ドルの大台を終値で回復したが、わずか1日しかもたなかった。
きっかけは同業他社であるJPモルガンが発表した減益決算だ。欧州債務危機に伴う金融市場の混乱で、企業の資金調達を支援する投資銀行部門の純利益は前年同期から52%減った。
JPモルガン以上に投資銀行業務や証券取引に依存するゴールドマンに投資している投資家にとっては、とても気の滅入る数字だったといえよう。市場ではゴールドマンが18日発表する決算内容への警戒感が高まった。
ゴールドマンでは証券取引部門を率いるトップ4人のうち2人の退社と、幹部級の大幅減給が報じられたばかり。経営環境の厳しさは他の金融大手も似たりよったりだ。株価が100ドルの壁を克服できるかどうかは、金融株全体の先行きを見極めるバロメーターにもなりそう。

ふたつ目は原油先物価格だ。前日には今年初めて終値で1バレル100ドルを下回ったWTIの期近物は13日も下げ、一時97ドル台と約3週間ぶりの安値を付けた。こちらも欧州危機に伴う世界経済の減速観測が相場を押し下げている。
原油安は長い目で見れば家計や企業の負担減につながる良い話とも取れる。だが今や代表的な金融資産として定着した原油があまり下落すると、投資家が損失を被って市場心理が悪化するという難点がある。実際、ダウ平均と原油先物の高安の方向は、今年に入ってからの9営業日のうち7日で一致している。株式の投資家も、イラン産原油の禁輸問題など商品市場の波乱要因から目が離せない。

そして最後が株式相場の値動きの乏しさだ。13日のダウ平均は前日比48ドル安。騰落幅が100ドルに届かないのは8営業日連続となり、これだけ長く続くのは昨年3月下旬から4月中旬にかけての15日連続以来だ。
このような様子見ムードの膠着した相場の後にやってくるのは、上下いずれかへの大きな振れだ。日足チャートでは完全に12,500ドルのラインで頭を押さえられている。昨年4月の場合はアップルや半導体大手インテルなどの好決算をきっかけに、株式相場は年間の高値に向けて突き進んだ。

来週はハイテク企業や金融機関の決算発表のピーク。1月下旬には今年の米金融政策を占う米連邦公開市場委員会(FOMC)や、欧州連合(EU)首脳会議もやってくる。「100ドル」という数字が分ける明暗を、不安定化する相場の道しるべとして使ってみるのも面白い。