韓国にとって北朝鮮ネタのデマは…

韓国の為替や証券の世界で北朝鮮に絡むデマは「古くて新しい相場操縦手口」(韓国金融監督当局)だという。だが、金正日総書記の死去と新指導者、正恩氏の権力世襲後、デマはより大胆に、より強烈になっている。今月6日には「北の軽水炉爆発」の噂に株価が急落。株価操作の可能性があるとみて警察が捜査する騒ぎになっている。

韓国証券市場の相場がおかしくなったのは6日午後。「北朝鮮寧辺の軽水炉が爆発。高濃度の放射性物質が流出し拡散している」という噂がインターネットで流れたからだ。相場はこれに反応、韓国総合株価指数(KOSPI)は一気に10ポイント以上下落した。
金融当局と市場管理当局は、この噂についてただちにデマだとして火消しに回ったが被害は防げず、警察に捜査を要請した。
韓国では金総書記死去後、この手のデマが相次いでいる。「国内総生産(GDP)400億ドルの北朝鮮に時価総額1兆ドルの韓国証券市場が揺さぶられている」(9日の中央日報電子版)。
先月27日には「北朝鮮でクーデターが発生し金正恩氏が死亡。中国が北朝鮮への派兵を検討している」との噂に市場が踊らされ、ロイター通信によると、KOSPIは一時2.33%下落。当局はこの急落でもうけた者がいるはずだとにらんでいる。

韓国証券大手の幹部によると、こうしたデマが相場操縦に有効なのは、「金正恩氏がまだ若くて不安定に見え、北朝鮮の権力内部で一体何が起きているのか本当のところ誰にも分からないからだ」という。
北の密室性は過去にも大きな相場動揺をもたらしている。韓国哨戒艦撃沈事件による緊張が高まっていた10年5月、「金正日総書記が全軍に戦闘態勢を命じた」の情報に相場が急落。KOSPIは2%台の落ち込みを見せた。

ただ、専門家によると、同じ「北朝鮮ネタ」でも、核実験とミサイル発射は比較的効果が小さいのだという。なぜだろうか。
韓国の捜査関係者は「相場の世界では風説は意外性が大きいほど効果がある。核実験とミサイル発射は衛星などの監視情報に基づいて報道されるため、時期や規模の予測が可能で驚きが少ないからだろう」と指摘。その上で「北朝鮮は謎の宝庫。まだまだ悪用されるはず」と予測している。