今狙い目の市場はココだ!

昨年1年間の日本の主要株価指数は軒並みマイナスだった。日経平均株価は17%下落、時価総額の大きい主力株で構成されるTOPIXコア 30に至っては25%下落した。比較的好調だった新興市場でも日経ジャスダック平均株価は6%安にとどまる。断トツのパフォーマンスとなっていた市場がある。大阪証券取引所第1部の単独上場銘柄だ。

昨年上場したサノヤスホールディングスを除く大証銘柄28社平均の11年年間上昇率は46%。大幅マイナスだった日経平均と対照的だ。単純平均のため、商いが少なく思惑などで急上昇した銘柄の影響も大きいことには気をつける必要があるが、大証銘柄が買われるもっともな理由もある。「大証銘柄は、東日本大震災、欧州債務問題、円高のいずれも影響が限定的だったことが上昇の要因」(岩井証券イワイ・リサーチセンターの有沢正一センター長)との見方だ。輸出株や震災影響が大きい銘柄を避ける流れに乗った形といえる。
これに加え、最近では「東京証券取引所と大証の統合に伴う需給要因も思惑視され始めた」(有沢氏)という。13年1月に予定される東証・大証の経営統合に伴い、東証第1部と大証第1部が統合する可能性が出てきたからだ。もし実現すれば、大証第1部単独銘柄が東証株価指数(TOPIX)に採用され、「同指数に連動するパッシブファンドによる大証銘柄への買いが想定される」(日本株パッシブ投信を運用するしんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹投信グループ長)。

まだ1年も先のこととはいえ、「指数入れ替えの際は、ヘッジファンドなど一部の投資家が先回り買いして収益を上げるのが通例」(外資系証券トレーダー)で、実際には13年1月を前に先回り買いが入る可能性が高い。こうした思惑から、大証単独上場銘柄がいま買われている側面があるという。
大証銘柄は時価総額が小さい中小型株が中心。毎日の売買代金も小さい。このため、パッシブファンドが機械的に買いを入れるとなると、株価への影響はかなり大きくなりそうだ。
例えば、山陽電気鉄道株。SMBC日興証券伊藤桂一シニアクオンツアナリストによる試算では、1日の売買代金(20日平均)が400万円に満たないなかで、TOPIXに採用されれば、2億円超の資金が流入する見通し。これは約60日分の売買代金に相当する規模で、実際に資金が流入すれば株価への影響は避けられなさそうだ。売買代金が同平均300万円の神戸電鉄株にも1億円超の資金流入が見込まれ、これは44日分に当たる。この日数が多い銘柄ほど資金流入による影響度が高いと分析することができ、同証券の試算によると鉄道株や百貨店株などの名が並ぶ。

東京株式市場における大型株の不振ぶりは、年が変わっても目を覆わんばかりだが、大証単独の虹技が乱高下するなど、値動きの軽い低位株物色が優勢な展開が続く。需給面に注目した買いが膨らむ状況は何を意味するのか。「需給という確実な材料に飛びつくのは、景況感の先行きが不透明で投資家が自信を持てないことの裏返し」(BNPパリバ証券の丸山俊日本株チーフストラテジスト)。市場関係者からは、こんな冷ややかな声も…。