「継続企業の前提に関する注記」企業の傾向

東証とジャスダックを含む大証に上場する企業のうち、経営上重大なリスクを抱えているとして「継続企業の前提に関する注記」が付いた企業は計63社にのぼることが、両取引所の集計で分かった。

上場企業の経営者は、経営している会社が、売上高の著しい減少、継続的な営業損失の発生又は営業キャッシュ・フローのマイナス、重要な営業損失、経常損失又は当期純損失の計上、重要なマイナスの営業キャッシュフローの計上、債務超過といった状況に陥り、1年以内に破綻するリスクが高いと判断したら、決算書の「継続企業の前提に関する注記」で倒産リスクの中身と対応策を明記することになっており、会計ルールとして03年3月期から義務づけられている。
つまり、投資家にとって「継続企業の前提に関する注記」は経営上の「イエローカード」の意味合いがある。

今回「イエローカード」を突き付けられた企業の中で、目につくのはエネルギー関連だ。東京電力は、福島第一原発事故以来、注記企業の仲間入りした。9月中間期の開示資料でも事故の賠償金支払いにより、「財務体質が大幅に悪化し継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる状況が存在している」と記載がある。
自然エネルギーへの注目度が高まっているが、風力発電所を手がける日本風力開発は「発電所設備建設に係る融資等において返済の不履行が生じている」といい、金融機関に返済を猶予してもらっている状況だ。

外食関連の有名企業も名を連ねている。「ペッパーランチ」を展開するペッパーフードサービスは、昨年9月末時点の報告書で「資金繰りの懸念が完全に払拭される状況にはない」としている。
ラーメンチェーン「どさん子」で知られるホッコクも「2期連続で営業損失を計上、営業キャッシュフローもマイナスとなっており資金調達手段も限定された状況」、「玄品ふぐ」を運営する関門海も昨年11月期決算で「7億8100万円の債務超過」と苦戦ぶりが浮き彫りとなっている。

小売では眼鏡チェーン大手のメガネスーパーの名も。「4期連続の赤字を計上し、昨年10月中間期も赤字を計上している」という趣旨の注記がある。同社は棚卸し資産を過大に計上していたとして17日に過去の決算を訂正し、昨年10月末時点で1億4300万円の債務超過となっている。
音楽ソフト販売大手の新星堂も「6期連続で営業、経常赤字で、転換社債新株予約権付社債や借入金の返済が困難な状況」として、ファンド傘下で再建を急いでいる。

注記を外すには経営を改善するしかない。人材派遣などを手がけるエスプール(ジャスダック)や、便器・洗面台など衛生陶器メーカーのアサヒ衛陶(大証2部)は直近の決算で黒字転換し、注記の記載を解消している。
一方、ITや不動産事業を手がけるメッツは会社を解散すると発表、今月30日の臨時株主総会で承認を求める。
健全な企業に戻れるか、「レッドカード」に移行して、証券取引所から退場するか、イエローカード企業にとっては正念場だ。