相続は今や中間層の問題(前編)

これまで金持ち税だと思われていた相続税に増税の流れが一気に押し寄せている。
政府が1月6日に決定した「税と社会保障の一体改革」素案で、15年1月からの相続税増税が盛り込まれた。素案では、相続財産のうち、課税されない部分(基礎控除)を5000万円から3000万円に圧縮。相続人1人当たりの控除額も、1000万円から600万円に引き下げる。さらに、現在は相続額3億円超にかかる最高税率50%を、同6億円超の部分は55%に引き上げる、などが柱だ。

相続税を巡っては、10年4月から零細企業や住宅の相続税を軽減するための「小規模宅地等の特例」の適用範囲が厳格化。この厳格化によって、これまではほとんど対象にはならなかった宅地に相続税が課税されるケースが増え始めている。
「2世帯住宅で同居かそうでないかの分かれ道は何か」東京千代田区の税理士法人タクトコンサルティングには、同特例の厳格化についてのこうした問い合わせや相談が、この1年半で急激に増えているという。親の住居を相続する時、この特例を受けられるか否かで大幅な増税につながるだけに、対象者には切実な問題だ。特に首都圏でマイホームを持つ人は、相続税がかかるケースが増える。
財務省によると、1年間に死亡した人のうち、相続税の対象者は4.1%(09年)。95%以上の人は相続税と無縁だったわけだが、増税後は6%程度まで増えるとみられている。
「相続税の課税対象は、富裕層から中間層まで広がっていくだろう」と同税理士法人の遠藤純一情報企画室課長は指摘している。

(中編へ続く)