相続は今や中間層の問題(中編)

(前編より続く)

相続は今や、富裕層だけの問題ではない。「うちには大した財産がないから相続問題は関係ない」という人も多いが、それは間違いだ。なぜなら、この言葉は「相続税問題」を指しているのであって、「相続問題」のことではないからだ。相続問題は、財産の多寡に関係なく起こる問題であり、むしろ財産が少ないほど分け方を巡るトラブルが起きやすいのが実態だ。

実際、相続をめぐるもめごとは急速に増えている。家庭裁判所に持ち込まれる相続関係の相談件数は約18万件(10年)と、この10年で2倍に増えた。1年間に死亡する人は約100万人であり、そのうちの実に18%は相続問題でもめている計算になる。
家庭裁判所まで行くのはよほど深刻なケースであるといえるため、そこまでいかないケースまで含めれば、実際の相続問題はずっと多いのだろう。
さらに相続争い件数を財産の価格別にみると、財産5000万円超の人の件数は横ばいであるのに対し、5000万円以下の件数は年々増加。5000万円以下の件数のほうが3倍超も多い。

それはなぜだろうか。「もめる相続もめない相続」などの著書がある三菱UFJ信託銀行の灰谷健司トラストファイナンシャルプランナーはこう解説する。「財産が多い人は、日ごろから税理士や金融機関など専門家に相談しながら対策を立てていることが多い。財産が多ければ、比較的分けやすいため、問題が起きにくい可能性もある。だが、財産が少なければ、それを平等に分けるのは難しく、もめごとが起きやすいのではないか。」
国税庁のまとめでは、相続財産の内訳は、不動産(土地、家屋)が56%(09年)と大半を占める。主な財産が自宅だけという人は多いだろう。これは相続では注意すべき典型的な事例だ。自宅1件の価格は数百万円から数千万円と、日常生活では目にする機会がない金額になる。その自宅に住んでいる場合は分けるのが難しく、たった1軒の家を巡って相続問題が起きるということはよくある。
つまり、誰の身にも突然降りかかる可能性があるのが相続問題といえる。

(後編へ続く)