相続は今や中間層の問題(後編)

(中編から続く)

では、相続をめぐる問題を防ぐにはどうしたらいいか。一番いいのはやはり生前に遺言を用意しておくことだという。東日本大震災をきっかけにして、自分にいつ何が起きるかわからないと真剣に考えるようになり、遺言書を書くためのセミナー受講者や相談は増えているという。
実際にはどのように作成したらよいのか。遺言の方式は民法で定められている。相続には、法律、税金、遺言、不動産など幅広い知識が必要となるため、確実を期すなら専門家に相談してみたほうがよい。遺言書作成にかかる費用はケースによってさまざまだ。一番安いのが個人で書く「自筆証書遺言」というもので、自筆で遺言書を作成できる「遺言書キット」というものもコクヨS&Tから2,415円(希望小売価格)で発売されている。

次に安いのが公証人に依頼するもので、「公正証書遺言」というものだ。公証人(一定の資格を持つ法律実務経験者(裁判官や検察官など)の中から法務大臣によって任命された人)に対して遺言の趣旨を口述(筆談・手話通訳も可)し、それをもとに遺言書を作成する方式である。法律の専門家が作成するため、方式や内容の不備という問題はなく、遺言書の原本は公証役場で保管されるため破棄・変造のおそれもなく家庭裁判所での検認手続も不要というメリットがある。この場合、遺言の目的財産の価格に応じて手数料は変わるが、例えば、財産1億円を1人に相続させる場合、43,000円+正・謄本代約3,000円+加算11,000円=約57,000円程度となる。
あとは、金融機関や弁護士に依頼するという方法もあるが、ともに30万円以上の費用が掛かるため、少額の相続を行う人にはあまり向いていないかもしれない。

相続を特に得意とする弁護士、税理士、司法書士、行政書士などがいるほか、銀行や信託銀行などの金融機関でも、相続や遺言についての相談を受け付けている。自治体や金融機関などでも、時々無料の相続セミナーを開いている。詳細は各業界団体などに問い合わせてみるとよいだろう。
相続問題は、もはや他人事で済ませられる問題ではない。何の準備もしないまま、相続が争続にならないために、相続税対策と相続対策はあらかじめ万全に整えておきたい。