日本国際バブルの崩壊は18か月以内に起こる説(後編)

(前編より続く)

──ただ日本には1400兆円の個人金融資産があり、日本国債の投資家も9割以上が国内で占められている。
「よく聞く話だ。まず、日本が抱える公的債務と民間の資産を同列にとらえるのはやめるべきだろう。日本人がいつまでも国債に投資し続ける保証はどこにもない。個人が銀行に預金し、銀行がそのお金を日本国債に投資する流れがずっと続いてきた。しかし加速する高齢化は預金の引き出しを招き、金利の低下を支えてきたこの循環は断ち切られることになるに違いない。」

──国債市場の危機はどのように到来すると予想しているか。
「今の市場が均衡を保っているのは極めて心理的な要素に基づいていると思う。『過去も大丈夫だったから、当面は何とかなるだろう』という心理だ。しかし金利上昇は、ある日突然起きるもの。ギリシャがそうだった。国債入札の札割れといった深刻なイベントが何も起きなかったのに、唐突に金利が上がり始め、一気に欧州危機が訪れた。人々の物の見方は一瞬にして変わるもの。日本だけが例外でいられる理由はない。」

──日本の投資家はどうすべきだと思うか。
「国債市場が崩壊すれば金利が急上昇し、預金をしていた一般の人々が最も大きな損失を被る。アドバイスとしては、円資産をできるだけ手放した方がいいということ。これからは、自律的な経済成長が可能で、金融の膨張や信用創造に頼ってこなかった国に投資すべき。生産性の高さや若い労働者がいる人口構成も重要な要素だ。条件に合致するのはカナダやノルウェー、豪州、インドネシア、インドなどだろう」

──欧米など先進国はどうか。
「借金が膨れあがった国は投資に値しない。02年から10年にかけて政府や民間を合計した世界の債務は年率で11%増えてきた。これに対し、世界のGDPの伸び率は平均で4%前後にとどまっている。実体経済の規模に比べ信用創造が明らかに過剰だったわけだ。これがもう限界に来ている。特に厳しい状況にあるのが日本や欧州、米国などの先進国だ。」

──欧州の債務問題をどうみているか。
「ギリシャでは債務減免交渉が長引いている。仮に民間債権者が元本を50%程度減額することで合意できても、同国のデフォルトは避けられないだろう。その程度の債務削減ではギリシャの財政再建は期待できない。欧州中央銀行(ECB)が流動性の供給で何とか欧州危機を食い止めようとしているが、イタリアなど南欧諸国では預金の流出に歯止めがかからない。12年中に、ギリシャからポルトガルにまで波及する連鎖的なデフォルトが起きる可能性は高いとみている。」

──これまで米住宅バブルの崩壊や欧州の債務危機を予見してきたが、投資家として心がけていることはあるか。
「世の中で正しいと思われていることを、そのまま受け入れないということ。自分の力で考えて、常に論理的であろうとすること。我々はこれまで、中央銀行のバンカーたちが提示する世界観を受け入れるよう求められてきた。まるで彼らだけが真実の箱の中身が何かを知っているかのように。その彼らは今、無制限にお金を刷り、経済の安定を何とか保とうと躍起になっている。しかし、この経済政策に限界が来ているのは明らか。もはや、国家を信用することはできない。自らの力で考え、生き残っていかなければならない時代が来ているのだ。」