FRBのインフレターゲット導入で孤立する日銀

1月25日、ついにFRB(米連邦準備制度理事会)が2%のインフレ目標(インフレターゲット)を導入した。個人消費支出(PCE)価格指数で2%を長期的な目標とするとした。これは歴史に残る大方針である。

インフレ目標は金融政策の枠組みとして広く世界各国で導入されている。数年後のインフレの目標を設定して、金利の上げ下げの幅・タイミングなど具体的なオペレーションは中央銀行に任せるというものだ。
インフレ目標の枠組みでは、「目標」は政府が関与するが、「オペレーション手段」の選択は中央銀行がやるので、中央銀行には、目標の独立性はないが、手段の独立性が確保されるという言い方がよくなされる。
バーナンキFRB議長は、インフレ目標が中央銀行の行う金融政策に透明性を与え、またインフレ目標を設定することは市場と中央銀行のコミュニケーションになって経済を安定化させるというインフレ目標の理論の世界的権威だ。
元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一氏は、「9年ほど前に、彼がFRB理事に就任したときに、いつか必ずインフレ目標が米国で導入されると思っていた」と話しているなど、米国におけるインフレ目標導入は、もはや時間とタイミングの問題だったのかもしれない。

これまで、インフレ目標の枠組みを先進国で取り入れていないのは、日本と米国だけだった。もっとも、日本と米国ではパフォーマンスに差がある。
新日銀法が施行された98年4月以降11年11月までの164カ月間、日本ではCPI(除く生鮮食品)の対前年上昇率が0-2%、米国ではPCE価格指数の対前年上昇率が1-3%にそれぞれなっていれば合格とすれば、日本の合格率は16%、米国は73%となる。
単なる合格率の低さだけではなく、日本の場合には81%はマイナスかゼロになっているので、デフレターゲットとも揶揄されている。

今回のFRBのインフレ目標は、日銀の物価安定の理解と同じとの声も聞こえるが、決定的にパフォーマンスが異なっている。また、かつて日銀はインフレ目標を採用しても、手段がなく金融政策で達成できないといっていたが、声明文に「長期的なインフレ率は主に金融政策によって決定されるため、FOMCはインフレの長期的な目標を具体的に定める能力がある」と書かれている。
これで日銀は中央銀行としてのメンツを失い、もはや存在価値はほとんどなくなったも同然、と言われても仕方がないように思うのだが、読者の方々はどう思われるだろうか。また、グローバルスタンダードが大好きな日本の評論家たちは、日銀に対してインフレ目標導入を呼びかけるようになるのだろうか。
そして世界から孤立していく日銀は、はたしてインフレ目標を採用するのだろうか。まあ楽しみである。