アリは追い詰めたキリギリスを最後に救う

7日付日本経済新聞朝刊総合面には「ギリシャ 賃金・年金の壁」「国民、削減に反発」「大規模スト計画」そして「独仏、最終決断迫る 支援条件譲歩せず」といった記事が並んでいた。しかし、ギリシャ国民がこれ以上、支援条件、すなわち更なる緊縮を受け入れる気はないようだ。いや、正確には受け入れることはできないといったほうがいい。なぜなら、ギリシャの物価では、月収500ユーロでは生活などできないからだ。
ギリシャ首相にしても4月には総選挙を控える。仮に、これが日本として総選挙2カ月前に、首相が国民に対し、最低賃金20%追加カット、年金追加20%カット、そして公務員15,000人削減案をブチ上げたらどうなるか、選挙結果の大勢は投票前に決してしまうだろう。

それに引き換え、ドイツはギリシャをはじめ南欧諸国というユーロの価値を引き下げる国があったおかげで、これまで輸出で大儲けすることができた。もちろん放漫財政を展開してきたわけでないことは認める。
ただ、イソップ物語のアリとキリギリスに例えれば、アリ組代表のドイツが、キリギリス組代表のギリシャを救済することに国民的抵抗が強いので、「支援条件譲歩できず」になるのはごもっともなこと。とはいっても、キリギリスはキリギリス、アリになれっこない。

メルケル首相は当然のことながら、最後の最後まで突っ張るだろう。「支援条件譲歩せず」という言葉を市場は何回聞いたことか。それでも彼女の立場では、言い続ける必要がある。簡単に譲歩したら弱腰外交になってしまうからだ。その上で、まさにデフォルト寸前に妥協策を提示し、問題の解決を先送りする以外の選択肢はなさそうだ。
キリギリスを追い詰めるだけ追い詰めたところで、最後は昆虫類の絶滅を回避するため、などと正義ぶったことを言いながら、アリが譲歩するというストーリー展開になるのではないか、という感じだ。
アリとキリギリスの試合は、3月のギリシャ国債大量償還を乗り切ったとしても、それはハーフタイムで一息つけるだけに過ぎず、過酷な後半戦が待ち構えていることは覚悟しておく必要がある。