決算ショックの嵐(前編)

東日本大震災からあと1カ月で1年になる。未曾有の混乱で下振れした日本の景気は目先、復興需要による回復期待が根強い。だが、超円高や欧州・新興国の景気減速で落ち込む外需を補うには及ばず、今年前半の持ち直しは不透明だ。

内閣府は来週13日、11年10-12月期の実質GDP(国内総生産)を発表する。市場の予想では、2四半期ぶりのマイナス成長になりそうだ。日本経済新聞社グループのQUICKがまとめた市場予想の平均であるQUICKコンセンサスマクロによると、成長率は前期比0.4%減、年率換算で1.4%の減少が見込まれる。
これは外需の下押し圧力がさらに強まったことが背景にある。1ドル77円前後の円高が継続し、輸出企業は為替採算面で厳しい状況が続いている。財政危機が叫ばれて久しい欧州の需要も低迷。1月のユーロ圏の景況感指数は昨年12月まで10カ月連続で前月を下回っていた。1月は11カ月ぶりに前月比で上昇したが、戻りは鈍い。日本のエネルギー輸入の増加もあり、2011年の貿易収支は31年ぶりの赤字に転落した。
景気を支える経済効果として、これまでのように外需に頼ることができない一方、大震災からの復興需要が一縷の望みとなっている現況は、足元でほぼ出揃った昨年10-12月期の企業決算にも映し出されている。会社が目標とする通期の業績見通しの水準に対し、直近の実績がどの程度まで達成できているかを示す進捗率を見るとわかりやすい。

SMBC日興証券は、東京証券取引所の株価指数であるTOPIX500を構成する企業について、発表ピーク日だった1月31日までで業種別に進捗率を集計した。営業利益ベースでは、陸運業が97.5%と最も高かった。2番手は食料品の89.9%。分析を担当した同社株式調査部の伊藤桂一チーフクオンツアナリストは、「年末に物流が活発化しやすい季節要因はあるものの、震災の復興に伴い、食料品などの消費が東北地方で増えた」と解説する。
その半面、進捗率の低さでは、電気機器が43.4%、自動車を含む輸送用機器が58.8%と、輸出業種が顕著だ。長引く超円高と海外需要の失速を受け、今期の通期の業績見通しを大きく下方修正する企業も相次いだ。
もっとも、業績の悪化の理由が、必ずしも円高や海外景気、さらには昨年発生したタイでの洪水の影響といった、多くに共通する要因だけかというと、そうとも言い切れないようだ。

歴史的な業績悪化を記録する見通しのパナソニック。12年3月期の連結最終損益は7800億円の赤字を見込む。前回予想(4200億円の赤字)から大幅に下方修正した。これは過去、日立がリーマンショック時の09年3月期に出した7873億円の赤字に匹敵する過去最大の規模。子会社化した三洋電機が思ったほどの収益を上げられず、構造改革を迫られる中で多額の減損処理を強いられた。ソニーも業績見通しを大きく下方修正した。韓国サムスン電子との液晶パネル合弁事業を解消する費用がかさむ。両社とも、円高や海外需要の落ち込みも足を引っ張るとは言え、過去の経営判断時の見通しに甘さがあった面は否めないだろう。
会社側が明らかにした業績見通しが、証券アナリストなど市場関係者の予想を大きく下回る事例も、輸出企業に目立つ。QUICKが両者による見通しの乖離を指数化して算出している「決算サプライズレシオ」を、本業の稼ぎを表す営業利益ベースで幅の大きい順に並べたものを表(2月3日時点)として添付した。今期は、法人税の引き下げに伴う繰り延べ税金資産の取り崩しで純利益見通しの下方修正がもともと多いため、営業利益のほうが実態をより表しているとみられる。

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(後編へ続く)