合併で様変わりしそうな東証の株主たち

大阪証券取引所との経営統合をきっかけに、東京証券取引所の株式が大きく動き出しそう。
非上場の東証株を現在保有しているのは100社余りの証券会社。大半を占める中小証券は株のネット取引や高速売買の浸透で生き残りが難しくなっている。13年1月の統合で上場株に変わる東証株を売却して換金し、証券業を廃業する動きが相次ぐ見通しだ。

日本最大の証券街、東京都中央区の日本橋兜町。東証ビルを中心に多数の証券会社が集まっている。この街で79年前に営業を始めた老舗の中小証券、十字屋証券が3月末に金融庁の金融商品取引業の登録を取り消し、証券業を廃業する。
4月からは社名を十字屋ホールディングスと改め、長期投資で資金を増やす資産運用業に転業する計画という。「日本の株式市場はいずれ回復する。だが証券業の繁栄は戻らないだろう。東証の上場が見えたタイミングで廃業を決めた」。創業家の3代目社長である安陽太郎氏は言う。
安社長は兜町の顔役でもある。50社超の中小証券が集まる業界団体「一月会」の幹事長を長く務めた。その安社長は「来年1月の上場後に東証株を売却し、それを退職金代わりに廃業しようと考える中小証券のオーナーが多い」と言う。
東証の株主は107社の証券会社。01年の東証の株式会社化の際に会員だった証券会社に2万株ずつの東証株が平等に配分された。

すでに一部の証券会社は相対取引で東証株を売却。11年3月末時点の筆頭株主はモルガン・スタンレーMUFG証券で、日本アジア証券が保有していた8万株を購入したもよう。2位のゴールドマン・サックス証券は、日本株から撤退したHSBC証券などから株を取得したとみられる。
来年1月予定の大証との合併で、東証株は上場する大証株と交換され、市場で売却できるようになる。その前に実施される大証株のTOB(株式公開買い付け)の価格(48万円)を基にすると、東証株は1株9万6912円。2万株を持つ証券会社が全株を売却すれば、20億円近い売却益が手に入る計算だ。

各社が東証株を手放すと、大証との統合で発足する「日本取引所グループ」の株主構成は大きく変わる。ある東証関係者は「海外機関投資家から新たに株を取得したいという打診が多数来ている」と明かす。
また、中小証券の間では、保有する東証株を東証がまとめ、国内外の投資家に一斉に売り出す構想も浮上している。かつて証券会社の会員組織として始まった取引所の株主は、東証と大証の統合で一気にグローバル化する可能性がありそうだ。

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