強まるドイツへの風当たり(後編)

前編より続く)

巨額の資金でユーロの防火壁を作れば最終的にドイツの負担も軽くなるという議論もあるが、当然ながらドイツ人はかなり懐疑的だ。メルケル首相のアドバイザーの1人は次のように指摘している。「南欧諸国がこの資金を欲しがっているのは、市場をけん制するためだけでなく、自分たちで使いたいからだ」
ドイツ人がユーロ共通債構想に抵抗するのも、もっともだ。現在の欧州連合(EU)の枠組みでは、ユーロ共通債が導入されるとドイツなど支払い能力のあるユーロ参加国は南欧諸国の債務を引き受けることになる。南欧諸国の歳出を一切コントロールできないにもかかわらずだ。先日リークされたドイツの文書にはギリシャの国家予算をある程度コントロールできる権限をEUの監督者に与えるべきだという案が記されていたが、ナチズムの復活だとする、いつもの批判の集中砲火を浴びてつぶされた。
要請の3つ目は、ドイツは欧州経済の不均衡を是正するために、もっと努力しなければならないというものだ。ドイツの消費は実際、既に増加している。だが、南欧諸国からもっとモノを買うようドイツ人に命じられるとは思えない。

現在のドイツたたきの大半は、乱暴かつ不当だ。だが、ある1点では確かにドイツに危機の責任がある。ドイツはユーロ創設を推し進める国々の先頭に立っていたのだ。そして今、背後に単一国家が存在しない単一通貨を創設したことが、現在の危機の根源にあることがますます明らかになってきた。
メルケル首相は、現在の危機の長期的な解決策として欧州の「政治同盟」の必要性について語る時、こうした設計上の欠陥を認めている。しかし、政治同盟は必ず深刻な国家主権の喪失をもたらす。そして今の危機は、ギリシャ人とドイツ人、イタリア人に重要な共通点が1つあることを示している。誰もが自国の国家予算の支配権を譲ることに強い嫌悪感を抱いているのだ。
その結果、ユーロは危険で不安定な立場に置かれている。ドイツに求められている行動は理不尽だ。だが、まず構造改革を実施し、あとで政治同盟を構築するというドイツ自身の解決策は実行不能だ。

これだけの危険に囲まれても、ドイツ政府高官は、表向きは平静を保っている。彼らは侮辱を受け流しながら、南欧諸国への金融支援を確約し、唯一の長期的解決策としてサプライサイドの改革を訴え続けている。
しかし舞台裏では、ドイツ政府の優秀な高官の一部は、かなり不吉な予感を覚えているあるドイツ政府高官はユーロについて、こう言っている。「我々は自分たちで止めることのできない地獄の機械を作ってしまったようだ」。つい笑ってしまうが、残念ながら、実はそんなに笑える話ではない。