現役世代が学ぶべき段階世代の資産運用

少子高齢化。この言葉の響きはあまりうれしいものではないが、これが避けられないのなら、われわれ現役世代は今からでも手を打つしかない。特に退職後の人生が長くなればなるほど資金面で厳しくなりかねないことを認識した上で、今からどう対応すべきかを考えるべきだ。
それに先立ち、「退職金での投資の実態」を団塊世代へのアンケートから探ってみよう。

フィデリティ退職・投資教育研究所では11年に60-65歳で退職金を受け取った8,018人に対して退職金の運用に関するアンケートを実施した。この世代はちょうど団塊世代にあたるが、08年のリーマン・ショック前に退職金を受け取って運用を行った人も多く、その動向は後輩に当たるわれわれにとっては大いに参考となる。
8,018人のうち37.3%にあたる2,990人が退職金で投資をしている。08年以前に退職金を受け取った退職者が65.9%、5,281人含まれており、リーマン・ショック前に投資をしている可能性が高い。その結果、残念ながら投資をした2,990人の68.1%が10年12月末で評価損を抱えていた。しかし、この評価損を抱えた退職者のうち5.3%が「買い増しする」、68.3%が「保有を継続する」と回答しており、その投資姿勢は長期投資に向かっているようで心強い。

一方で課題も見つかっている。第一は、8,018人のうち30.3%の人が退職金を「振り込まれた銀行にそのままにしている」と答えており、退職金を「ほったらかし」にしている姿が見受けられること。
また、退職後の生活に金銭面で不安を抱えている人ほど、「投資をしない」、「高い金利の金融商品に預け替えない」という傾向が強いことも分かった。金銭面で不安があって慎重になるのはわかるが、金縛りにあっていてはその金銭面の不安から逃れることはできない。退職金が大切な退職後の生活資金であればこそ、それをどう生かすかを十分に検討する必要があろう。
また、退職金を「定年退職後の生活費に使う」と答えながら、投資する金融商品はリスクの高めな「日本株」を選んでいる人が47.2%もいることや、退職金を「万一のための備え」と考えているのに、最近人気の「海外債券に投資する分配金のある投資信託」に投資している退職者も見受けられる。こうした「退職金をどう使おうとしているか」という目的と投資対象とのミスマッチは、われわれの反面教師とすべきだろう。

最後に、団塊世代8,018人に「定年退職前にやっておけばよかったことは何か」と質問している。50.6%の退職者が選んだ選択肢は「退職後の生活に心配しないだけの資産形成」だった。私がサラリーマンをしながら資産運用をしているのも、まさにここにあるわけだが、現役世代はこれを十分肝に銘じる必要がある。