ギリシャ無秩序デフォルトなら、ユーロ圏の影響は1兆ユーロ

国際金融協会(IIF)は、ギリシャが無秩序なデフォルトに陥れば、ユーロ圏への影響が1兆ユーロを超えるとともに、危機の連鎖を食い止めるためスペインとイタリアも外部支援を余儀なくされる恐れがあると警告した。ロイターが市場関係者から入手した2月18日付の国際金融協会(IIF)の極秘文書で明らかになった。

「IIFスタッフ・ノート:部外秘」と記された文書は「ギリシャ国債の無秩序なデフォルトがあれば、非常に重大かつ有害な影響が生じる。そうしたすべての偶発債務を正確に集計するのは困難だが、1兆ユーロを超えないとも考え難い」と指摘した。
ギリシャ第2次支援がまとまらず、同国が3月20日に期限を迎える国債の償還をできなければ、無秩序なデフォルトとみなされ、ユーロ圏の政治家が管理能力を失ったとみなされる可能性があるという。
そうなれば他のユーロ圏重債務国が市場の標的となる恐れがあり、スペインとイタリアは3500億ユーロの支援が必要となる可能性があるとIIFは試算している。
これに加え、アイルランドとポルトガルも追加支援が必要になり、そのコストは今後5年間で3800億ユーロに達するとみている。

IIFの文書はまた、民間債権者との債務交換で支持が得られなければ、欧州中央銀行(ECB)が大きな損害を被る可能性が高いと予想。ECBは資本基盤の200%超に相当する推定1770億ユーロのギリシャ国債を保有しているためとしている。
また債務交換に十分な参加が得られなかった場合、銀行の資本再編コストが増大し、その額は容易に1600億ユーロに達すると予測している。
IIFはその上で、債務交換が実施されなければ、ギリシャ国民の生活水準が破滅的な影響を受けるとともに、ユーロを脅かすと警告。「無秩序なデフォルトはギリシャの早急なユーロ脱退を招く可能性が高く、ECBの財務に対する衝撃と相まって、ユーロの安定性をめぐり著しい疑問が生じる」とした。

アナリストはIIFの文書について、債務交換への参加を促すための警告とみている。
ソードフィッシュ・リサーチのアナリスト、ゲリー・ジェンキンス氏は「IIFの報告書は、債務交換への参加を促すため、最悪のシナリオに基づいて書かれている」と指摘。「ギリシャ債務交換への参加率は75%を上回り、集団行動条項(CAC)を適用して残りの債権者も債務交換に応じさせる公算がおそらく最も大きい」との見方を示した。

債務交換の回答期限は8日。参加率が75%を上回るものの90%を下回る場合には、ギリシャが集団行動条項を適用するとみられている。
ただ集団行動条項が適用されれば、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の決済が発生するとともに、ヘッジファンドや他の債権者が法的手段に訴える可能性が高まる。
また1770億ユーロの国債についてはギリシャの法律、残りは英国法に準拠することも、債務交換の手続きを複雑化する要因となっている。