ギリシャの計画的デフォルトを改めて整理

ギリシャ国債を1000億ユーロ以上保有する民間投資家が、ギリシャの巨大な債務再編に参加する意思を表明した。これで大きな関門を突破したことになり、史上最大のソブリン債務の計画的デフォルトが思惑通りに進む可能性が高まった。

  • 追加支援の条件確保に自信

民間保有のギリシャ債の半分以上を抱える投資家(欧州の最大手クラスの銀行やギリシャ政府系の年金基金の大半を含む)の参加表明で、ギリシャ政府が反対派に債務減免を強制するのに必要な最初の基準をクリアした。
参加総数は7日に大きく増えた。32の欧州銀行から成るコンソーシアムが合計840億ユーロ分の債券(2060億ユーロに上る民間保有のギリシャ債の41%に相当)について同意を表明したのだ。ギリシャの複数の年金基金とその他政府系機関による同意を加えると、総計は1000億ユーロを超えた。

  • ギリシャが債務を再編する理由

2年近くにわたり、救済資金を使ってギリシャ債保有者に元利払いを満額実施してきた後、ユーロ圏の当局者たちは昨年になって、多くのアナリストが何カ月も前から主張してきたことを認めた。すなわち、ギリシャ政府がすべての債務を返済するのは無理だということだ。
民間の債券保有者は2度の再交渉を余儀なくされた末に、ギリシャおよびユーロ圏当局と合意に達した。投資家は保有債券を額面価値が半分以下の新発債と交換し、基本的に、ギリシャが抱える総額3500億ユーロの債務のうち、1000億ユーロを帳消しにするという内容だ。
この債務再編と救済融資の金利の引き下げにより、ギリシャは2020年までに債務水準を国内総生産(GDP)比120.5%まで削減できると予想されており、当局はこれでギリシャが支払い能力を取り戻せると見ている。ベニゼロス財務相はギリシャのラジオで「債務交換によって経済が息を吹き返す」と語った。

  • 債券保有者が損失負担に同意する理由

経済と財政の状況が悪化するに従い、ギリシャ政府が「ハードな」デフォルトを余儀なくされる可能性が高まっていった。つまり、債権者に返済する現金が底を突き、債券保有者が完全に丸損する事態だ。
債務減免を受け入れやすくするために、ユーロ圏の当局者たちは、300億ユーロの現金プールをはじめとしたインセンティブを提供している。参加者はそれぞれ、保有債券の額面価格の15%に相当する現金支払いに加え、31.5%相当の新発債を受け取る。
こうした新発債は従来の債券よりずっと安全だ。新発債は英国の法律の下で発行され、ギリシャ議会が将来、デフォルトを強要することが不可能になるからだ。また、新発債は救済融資と同等の扱いを受ける。将来損失が発生した場合、ユーロ圏の各国政府が分担しなければならないということだ。

  • 参加しない投資家の行方

ギリシャ政府は、ほぼすべての債券保有者に参加を強制する法律を制定し、実行に移すと警告してきた。ギリシャ債の約86%はギリシャの法律に基づいて発行されている。政府は先月、投資家の圧倒的多数が同意すれば、債務減免などの措置を全員に強要できる手段である「集団行動条項(CAC)」を新法に盛り込んだ。
CACを発動するためには、ギリシャ法に基づく債券の保有者の半数以上が投票し(この基準は7日にクリアした)、投票者の3分の2が参加に同意しなければならない。3分の2の基準を達成できる可能性は高く、当局は、この基準を超えたら、ギリシャ法に基づく債券すべてについてCACを発動する意思を表明している。
外国の法律(大半が英国法)に基づいて発行された残り14%のギリシャ債については、事情はもっと複雑だ。ギリシャ政府は基本的に、外国法に基づくギリシャ債で参加を拒む投資家には、一切カネを払わない戦略を取っている。こうした投資家が参加しなければ、債券の元利払いを止めるとギリシャ政府は脅している。

  • 債務減免がうまくいかない可能性

CACの基準がクリアされれば、次にカギとなるのは、外国法に基づく債券の保有者に参加を促し、95%の参加率を達成することだ。この数字は、欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)のアナリストが、ギリシャの債務水準を2020年までにGDP比120.5%に引き下げるために挙げたものだ。
外国法に基づくギリシャ債の多くはヘッジファンドが保有しており、一部のファンドは法的措置を検討している。こうした投資家には、決断するまでまだ時間があるため、当局は8日夜になっても、早急に95%の基準を達成できるかどうか分からないかもしれない。だが専門家は、参加しない投資家への支払いを削減することで、不足分は埋められるはずだと語った。