CDSの支払いを前倒しに

国際スワップデリバティブ協会(ISDA)は、ギリシャ国債を保証する額面約30億ドルのクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のクレジットイベント(信用事由)決済の支払い額を決定する入札を通常よりも早く実施する方針だ。ISDAは、ギリシャ政府による史上最大規模の債務再編での集団行動条項(CAC)発動で信用事由が発生したと認定した。

ISDAは9日にウェブサイトに掲載した資料で、支払い額を決定するために利用可能な証券の数を「最大化する」ため、19日に入札を実施すると発表。CDSが保証する証券の回収価格を決定する同入札は通常、信用事由発生後約1カ月で実施される。
INGグループのシニア金利ストラテジスト、アレッサンドロ・ジアンサンティ氏は「この証券に対する投資家の信頼感を維持することが重要だ。信頼感は、各国の国債発行能力に影響を及ぼすからだ」と説明。ISDAの判断はCDS市場の「信頼回復」につながるだろうと述べ、「投資家の需要を喚起したいのならヘッジを可能にする証券を提供する必要があり、CDSは最善の証券だ」と指摘した。
ISDAの判定委員会は9日の発表資料で、ギリシャによる債務再編でのCAC活用により信用事由が発生したと表明。この決定前、ギリシャ国債1000万ドル相当を5年間保証するコストは前払い760万ドルに年間10万ドルとなっていた。

トリシェ前欧州中央銀行(ECB)総裁ら政策当局者は、トレーダーらが財政難の国の証券を投資対象にする傾向を後押しし、それが債務危機をさらに悪化させる懸念があるとしてギリシャ債CDSの決済に反対していた。
ソシエテ・ジェネラルの銀行アナリスト、ハンク・キャレンティ氏はリポートで、CDS決済発生は「次はどの国になり、どの銀行が最も危険かという問題を提起する」と指摘。「6カ月足らず前には、われわれは、ギリシャに関する信用事由を発生させてはならないと説くECB総裁を擁していた」と付け加えた。