ボルカー・ルールに世界中から批判の声

米国が新たな金融規制策として7月に導入する「ボルカー・ルール」に対する各国の批判が強まっている。銀行がリスクの高い取引を行い、結果的に経営が悪化して金融システム不安を招く事態を防ぐことが狙いだが、米国債以外の国債取引制限が各国の資金調達に悪影響を与えるなどと苦情が殺到。規制の大幅な見直しを迫っている。

「08年の(金融)危機を繰り返してはならない。改革が必要だ。」ボルカー元米連邦準備制度理事会(FRB)議長は14日、ワシントンでの会合で、自らが主導する金融規制の意義を訴えた。会場には各国の金融当局や金融機関の担当者が詰めかけ、熱心にメモを取る日銀関係者の姿もみられた。
だが、「間違った処方箋だ」と、先月英紙に連名で寄稿した安住淳財務相とオズボーン英財務相はボルカー・ルールをこき下ろした。原案では、米銀と米国に子会社をもつ外国銀行は、米国債以外の国債について自己勘定での取引が制限される。両財務相は「国債の取引量が減り、国債発行自体も難しくなる」と懸念し、金融危機の再発防止にもつながらないと批判した。

米国から海外銀行に送金される利子や配当金などの支払いに課税する構想も批判を浴びている。
FRBが先日締め切ったボルカー・ルールに関する意見公募には日銀や金融庁も含め約17,000件の意見が寄せられた。金融庁幹部は「目を通すだけでも大変だろう」と皮肉を込める。
FRBのバーナンキ議長は議会で「多くの難題を解決しなければならなくなった」と頭を抱え、7月導入は困難との見方を示唆。米政府もルールの見直しを進めているが、「金融危機の深刻さを忘れた人もいるようだ」(ガイトナー財務長官)と大幅修正には抵抗感が強いのが現状だ。米政府と各国の軋轢は容易に埋まりそうにない。