それでも成長するジェネリック

12年のジェネリック医薬品(以下GE)促進策が3月5日の官報で発表された。2月10日に中医協で発表された促進策と同一であり、4月1日から適用される。
今回のGE促進策は大きく4つにわかれる。

  1. 調剤薬局のGEインセンティブ(誘因)の一部引き上げ
  2. 医師に対する一般名処方加算
  3. 薬局で患者に対するGEと新薬の薬価情報等の提供
  4. 病院でのGEインセンティブの増点

である。
このうち株式市場は調剤薬局のGEインセンティブに注目している。2月にGE専業大手の株価が低迷した理由は、GEインセンティブが市場の期待ほど高くなかったことにある。10年4月の改定では調剤薬局に対するインセンティブが大幅に増点されたため、GE普及につながったわけだが、今回の場合は次のようになっている。
薬局向けGEインセンティブは、処方箋に占める後発医薬品の割合が

  • 数量22%以上30%未満の場合5点
  • 数量30%以上35%未満の場合15点
  • 数量35%以上の場合19点

となった。これは前回の

  • 数量20%以上25%未満の場合6点
  • 数量25%以上30%未満の場合13点
  • 数量30%以上17点

に対して、大きな増点となっていないばかりか、逆に数量20-30%の間では1-8点の減少になる。

処方箋1枚につき1点10円で10-80円も減少するため、薬局には厳しい改定となったことになる。また、数量30%以上を達成しても、前回に比べ2-4点しか増えないため薬局にとってはインセンティブというよりも、ただのムチという様相に映ってしまう。
他のGE促進策にしても大きな増点が見られない。一般名処方とはブランド名ではなく、化合物の一般名を処方箋に記載することであり、薬剤師がジェネリックに置き換えやすくなると考えられている。一般名処方加算は2点であるため、処方箋1枚につき20円の加算となる。また薬局では薬剤服用歴管理加算が従来の30点から41点に引き上げられたが、算定条件にGEの有無及び価格の情報提供が必須となった。こうしたことにはソフトウエアのアップデートなど、煩雑な作業を要するため、多くの門前薬局では対応が遅れると考えられる。
4つめの「病院に対するGEインセンティブ」も30点から35点に引き上げられただけであり、影響は小さいと考えられる。このように、一見すると小規模なGE促進しか期待できないように見える。

だが、野村證券では株式市場の意見に反して、GE市場は12年度に前期比8%の高い成長を予想している。最大の理由は調剤薬局に対するインセンティブであるが、一般名処方加算と薬価差通知の相乗効果に注目しているという。
薬局においては、GEよりも値段の高い長期収載品を処方した場合、薬価差マージンが取れる。GE数量シェアが20%未満の薬局は全体の約5割を占めているため、努力して5点の加算をとるよりも、むしろ採算性の高い長期収載品へとシフトする可能性もある。
しかし、今後の改定でも政府はGE促進を進める公算が大きく、薬局としては消極的ながらもGE促進には努めざるを得ない。このため12年度にGE数量シェアは2%ポイント増えると予想した結果、GEの市場成長は同8%と予想している。

中長期のGE促進策の最大のドライバーは一般名処方(GEのある医薬品を一般名で処方し、患者の選択を可能にする)の普及と薬価差通知の普及である。
10年4月の診療報酬改定の最大の問題は開業医の再診料2点の引き下げであった。診療所の平均外来受付回数は1.5万人であるため、大部分が再診患者とすると2点で年間30万円弱の減収となるため、日本医師会が強く反発したわけだが、今回の一般名処方加算は同じ2点である。開業医は一般名処方すれば失われた年収30万円を取り戻す事ができることになり、一般名処方が記載された処方箋は大幅に増えると予想される。
一般名処方された処方箋を受けた薬局では、GEを処方せずに長期収載品を処方する可能性がある。これを抑制するのが薬価差通知である。11年9月7日に発表の「後発医薬品の使用状況調査」では、薬剤費の軽減額通知を受け取った患者の約半分はジェネリックに切り替えている。一般名処方、薬価差通知が広がれば、GE市場は12年度のみならず13年度も成長が期待されよう。