豪ドルの危うい日本人頼み

日本の個人投資家の間で人気の高い豪ドルの相場が先週、一時急落した。これまで豪ドル高を支えてきた日本の個人マネー。その流れに足元で変化の兆しがみられる。
豪ドル相場は20日、豪英系の資源大手、BHPビリトンの幹部が最大の輸出先である中国の景気減速を懸念する発言をしたのをきっかけに急落。豪ドルを買い持ちにしている日本の投資家たちをひやりとさせた。

「高金利、資源国」という特徴を持つ豪ドルはこれまで、世界景気連動通貨とされてきた。景気が強いと買われ、弱ければ売られる。その定説が必ずしもてはまらなかったのが昨年。
欧州危機を背景に、世界景気が減速する中で、豪ドルは年間でほぼ横ばいを維持。資金流出は意外なほど起きなかった。
豪ドルの不思議な安定を演出してきたのは、高金利を好む日本人だ。その象徴が「タンゴウ」である。大和住銀投信投資顧問が運用する「短期豪ドル債オープン」には大量の個人マネーが流入。純資産は昨年初めから4500億円も増え、一時1兆3000億円を超えた。同社のもとには、豪州の楸瑛扶翼インが地方債投資の勧誘に訪れるほどだ。
同じく豪ドル債で運用する「杏の実」(ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン)も1兆円近くに拡大。日本人が投信を通じて保有する豪ドル債は2月末で4兆8118億円。通貨別では最大で、2位のドル(約3兆円)を大きく引き離す。外国為替証拠金取引(FX)でも日本人は豪ドルを一貫して買い越してきた。

日本人の豪ドル投資は、為替市場の規模からして過大との見方がある。世界の直物取引に占める豪ドルの割合はドルの10分の1。豪ドルはこれまで豪長期金利と連動してきたが、その関係は薄れている。
一段の利下げを織り込んで長期金利が低下する中で、豪ドルが堅調なのは、日本の個人マネーの流入が影響している。3月19日。野村アセットマネジメントは、1か月前に設定したばかりの「豪ドル債オープン・プレミアム」の購入受け付けを一時停止した。運用規模が3000億円を超え、「流動性などを勘案した」という。
シティバンク銀行の高島修チーフFXストラテジストは「豪ドルは(相関性の高い)商品相場からみても割高」とみる。その気配を投資家も感じているのか、豪ドル型投信には利益確定売りが増え始めた。「タンゴウ」も3月に入り資金がわずかながら流出に転じている。