グロソブも通貨分散の時代へ

国際投信投資顧問の債券運用部長で、同社の旗艦ファンド「グローバル・ソブリン・オープン(通称:グロソブ)」運用チームのチームヘッドを務める堀井正孝氏は2日、ロイターとのインタビューに応じ、今後の運用方針として、当面は地域・通貨分散が重要との見方を示した。
「どこかに偏ることなく、米国、オセアニア、欧州の3地域のバランスを見ながら調整する状況が続く」としている。2月に投資を開始したニュージーランドについては、オセアニアの中で比率の引き上げ余地があるほか、今後円高の修正が進む中では、円比率は適宜引き下げていく方針。中国の景気減速懸念や、新興国のインフレ等が先進国のどの国にどの程度影響を及ぼすのか等が、今後のリスク要因と指摘した。

「グロソブ」のポートフォリオの状況は、3月29日時点で米ドル圏32.1%(うち米ドル20.5%)、オセアニア20.1%(うち豪ドル19.3%)、円11.7%、ユーロ圏36.1%(うちユーロ11.6%)。
「グロソブ(毎月分配型)」の純資産残高は3月30日時点で1兆7596億円。基準価額は5,015円(設定来の分配金合計額は7,221円)となっている。
堀井氏は「嵐は過ぎ去ったと考えている」とこの半年を振り返った。米国経済にあった二番底懸念も遠のき、欧州債務危機問題もいったん峠は越え、為替市場における行き過ぎた円高進行も落ち着いたとみている。ただ、米国経済については、製造業は好調なものの、住宅が米国全土で回復しているわけではない。ユーロ圏についても、ドイツ経済は好調でもギリシャを抱えているなど、現在は玉石混交だ。
こうした投資環境下、堀井氏は「地域分散、通貨分散といったポートフォリオのバランスが重要になっている。当面は米国、オセアニア(オーストラリア、ニュージーランド)、欧州の3つの地域をみながら調整する状況が続く」との見方を示した。

国際投信は2月、「グロソブ」が戦略的な投資対象と考える「先進周辺国」のさらなる分散投資先の確保などの観点から、ニュージーランドへの投資を開始した。
これまではニュージーランド国債の市場規模が相対的に小さく(シティグループ世界国債インデックスベースで約3.5兆円、12年1月末現在)、投資を見合わせていたが、ニュージーランドの約13兆円という経済規模や、政府債務残高も少なく、高い格付けを有するといった信用力の高さに加え、世界金融危機の影響が軽微で、成長著しいアジア経済の恩恵を受けていることなどを評価した。
堀井氏は、ニュージーランドは「グロソブ」が投資している国で唯一、中国と自由貿易協定(FTA)を結んでおり、2008年以降、中国への輸出が急増していると指摘。輸出品目では、オーストラリアが銅や鉄鉱石など景気循環に左右される項目が多い一方で、ニュージーランドは乳製品などが多い。こうした乳製品などは、中国の人口増や所得増といった長期のトレンドに起因して伸びるものであり、オセアニアの中で分散を効かせるためにもニュージーランドへの投資は有効との見方だ。
オセアニアの比率は現状の2割程度は維持する考えで、「市場規模や2国間の金融政策、景気等を見ながら、ニュージーランドの比率を引き上げることも考えている」と述べた。ただ、オセアニア全体の比率引き上げは中国の景気がリスクになるとし、長期的にも商品市況の影響を考慮し、「偏ったことはできない」との見方を示した。

ファンドの基準価額に大きな影響を与える為替については、今後、ユーロや欧州通貨が上昇する可能性がある一方、昨年上昇が続いた豪ドルは、ユーロへの巻き戻しから他通貨に対して上昇しない可能性が高いとみている。米ドルもそれほど上昇するとはみていない。
堀井氏は「欧州の悪さを(金融市場では)かなり織り込んできた。今後はどちらかというと売り過ぎた人が買い戻す場面になる」とみており、ユーロや欧州通貨が上昇する可能性を示唆した。昨年から活発だったユーロ売り、豪ドル買いの取引だが、こうしたポジションはまだ足元でも多いとみており、「欧州債務問題がいったんは峠を越えた今、これから豪ドルを売り、ユーロを買い戻す動きになってくる。こうしたポジションの偏りや、中国の景気減速懸念などを考慮すると、豪ドルは短期的には他の通貨に比べ上昇しない可能性が高い」とみている。

現状、他の国よりも景気の状態が良い米国は、金融システムも欧州に比べて良い状態にあるほか、金融政策は、当面、低金利政策を続けるとしている。堀井氏は「為替は金利に影響される部分が多く、ゼロ金利政策が続いている間は上昇する度合いも少ない」とみる。こうしたことを考慮し、いったんは13%程度まで下げた米国比率を2割程度まで戻してきた。「利上げが近いとなれば、比率を引き上げることになるが、今時点では利上げの話もなく、現状維持になる」としている。
一方、一時は23%近くあった円比率が、足元では11%台に低下してきている。堀井氏は、徐々に円高は修正されるとの見方で、それに伴い「適宜、円比率は引き下げたいとは思っている」と述べた。

この半年、世界経済を不安に陥れた欧州債務危機について堀井氏は「最悪期は脱したとみている。欧州発で世界経済が悪くなるとは想定していない」とし、今後のリスク要因は「新興国」にある、とした。
短期的なリスクでは、中国の景気減速を挙げたほか、新興国におけるインフレ等が先進国のどの国にどの程度影響を及ぼすのか等を注視しているとした。
堀井氏は、資源を産出するコストが上昇しているとした上で、商品市況が上昇しても、企業はもうかりにくい状況になりつつあると指摘。金融危機後の回復時は、商品高=商品輸出国が伸びる、という構図だったが、今後は必ずしもそうした状況にはならないという。商品市況の上昇はインフレにつながり、輸出国や企業がもうからない状況になると、間接的には「グロソブ」が投資する先進国にも影響してくると指摘。足元で一番影響があるのがオーストラリアになるだろう、とみている。