家電3社は総崩れ

ソニーとシャープは10日、12年3月期の連結業績予想をそれぞれ下方修正した。これによりソニーは創業以来最悪の最終赤字に陥ることはほぼ確実となり、もともと過去最悪の当期損失を予想していたシャープに至っては赤字額がさらに膨らむことになった。
すでに前期において、パナソニックが製造業として史上最悪水準の7800億円の当期損失を計上する見込みになっているなど、家電3社が総崩れの記録的な決算となる。

ソニーの連結業績(米国会計基準)は、当期純損益の赤字が従来予想の2200億円から5200億円に拡大する見込み。米国子会社の収益悪化を織り込んで、繰延税金資産に3000億円の引当金を計上する。前年同期は2596億円の赤字で、最終損失は4年連続。売上高、営業損益、税引前損益とも据え置いたが、最終損益は4回目の下方修正となる。5200億円の最終損失は、映画事業で巨額の減損損失を計上した95年3月期の2933億円の赤字を超える。
12年3月期の決算予想については、期初段階では800億円の当期黒字を予想していた。東京都内の本社で記者会見した加藤優最高財務責任者(CFO)は「経営として重く受け止めている。昨年度は、震災の影響、超円高、(タイ)洪水もあったし、厳しい市況や欧米市場の成熟化などたくさんの要因でこのような決算となった」と述べた。
同時にソニーは13年3月期の営業損益見通しも公表した。通期の為替レートがドル円で80円前後、ユーロ円で105円前後の前提で、約1800億円の黒字に転換する見込みという。詳細は5月10日の12年3月期決算発表で開示する予定だ。

そしてシャープは、12年3月期の連結業績について、売上高が従来の2兆5500億円から2兆4500億円に、営業損益が従来のゼロから400億円の赤字に、最終赤字が従来の2900億円から3800億円に拡大する見込みと発表した。最終赤字額はリーマン・ショック後の09年3月期の1258億円を上回って過去最悪。12年3月期業績予想は3度目の下方修正となった。
売上高の下方修正の要因は、モバイル端末向けの中小型液晶の出荷が遅れたほか、液晶テレビ事業の不振も響いた。液晶パネルの堺工場は今年に入って稼働率を50%まで落としたが、昨年まではフルに近い稼働を行っていたことからパネル在庫が膨らんでおり、この在庫評価減を計上する。これを含めて大型液晶パネルの構造改革費用を積み増すことで、最終赤字額が膨らむ。
大阪市内で記者会見した大西常務は下方修正について「見通しの甘さがあった」と述べた。一方で、最新技術「IGZO」を使ったタブレット端末用の中小型液晶パネルは当初は昨年内に量産出荷の予定だったが遅れた。ただ大西常務は「3月末から量産出荷を開始した。4月以降収益に寄与していく」とした。IGZO技術を使った中小型液晶パネルは米アップルのiPad用に供給するとみられている。