ソニーは本当に立ち直れるのか

11日の東京株式市場でソニー株が続落し一時、前日比7%安まで下げた。12年3月期連結決算(米国会計基準)が、5200億円の最終赤字になることを前日引け後に発表したことで大幅な収益悪化が嫌気された。終値は71円(4.5%)安の1,515円と、下げ幅を縮めたものの、市場はソニーの「将来像」へ不安感を高めている。

「こんなに株価の下げが大きくなるとは思わなかった」と、あるアナリストは11日の市場の反応に驚きを隠さない。
10日発表の業績下方修正の主因は、米国事業の収益悪化に絡む、繰り延べ税金資産の取り崩しだった。前の期にも国内事業で同様の処理をしている。日本を代表するグローバル企業であるソニーで、国内だけでなく海外でも収益が悪化していることを、改めて市場に印象づけた。
薄型テレビの不振が響いて、そろって12年3月期に過去最悪の赤字を計上する見通しのパナソニックやシャープと比較しても、ソニー株の中期的な下落率は大きい。10年末の株価と比較すると、ソニーの下落率48%に対し、シャープは39%にとどまる。

ソニーは10日には、13年3月期の営業利益見通しを約1800億円と、5月の決算発表を待たずに、異例ともいえる前倒し開示に踏み切った。しかし、市場はその実現性に不信感をぬぐえていない。ソニーは12年3月期で4期連続で最終赤字を計上するなかで「テレビの黒字化や営業利益率目標などで市場を裏切り続けてきた」(SMBC日興証券の三浦和晴アナリスト)からだ。
そもそも将来の稼ぎ頭が何なのか、という根本的な疑問も市場では根強い。ソニーに対して機関投資家は「もうかる分野にどう経営資源を集約していくのかが見えない」と口をそろえる。11年4-12月の事業別の営業損益をみると、ソニーで黒字なのは金融、音楽、映画と、本業である電機以外の事業だ。

パナソニックはデジタル家電は赤字だが、稼ぎ頭の白物家電を中心に環境事業に経営資源を集中する方針。液晶事業が年間では大幅な赤字になるシャープは、台湾の鴻海精密工業との資本提携をテコに収益改善を図るなど、戦略を示している。
12日には、1日に就任した平井一夫社長兼最高経営責任者(CEO)が出席する経営方針説明会を開催する。どんな答えを出すかに市場の注目が集まる。