米景気の回復が世界景気を牽引

米連邦準備制度理事会(FRB)が11日発表した地区連銀経済報告(ベージュブック)によると、米全土で緩やかに景気回復が進み、米経済が自律回復過程をたどっていることを裏付けた。欧州がリセッションに向かい中国が減速する中で米国に世界の成長エンジンとしての期待が集まっている。

12地区の連銀が2日までに実施した聞き取り調査を基にしたベージュブックでは、12地区すべてで経済の拡大が続いていることが報告された。労働市場の改善と株高、金融緩和が米消費者の信頼感向上や支出拡大につながっている。
3月の雇用統計では非農業部門雇用者数が前月比12万人増となり、改善ペースが鈍化したものの、1-3月期平均では1カ月当たり21万2000人増と、前年10-12月期平均の16万4000人増を上回っている。ブルームバーグ消費者信頼感指数は4年ぶりの高水準を記録。2月の個人消費支出(PCE)は前月比0.8%増と、7カ月ぶりの増加率を示している。
米ディシジョン・エコノミクスのアレン・サイナイ社長は「米経済はスイートスポットに入りつつある。雇用増加ペースの加速が家計所得向上と消費拡大につながるサイクルに入っている」と指摘した。
アライアンス・バーンスタインのグローバル・エコノミック・リサーチ・ディレクター、ジョセフ・カーソン氏は、米消費の回復は欧州とアジアにとって大きなプラスであるとし、その理由を欧州とアジアの製品に対する輸出需要が増加するからだと説明した。米国では輸入が過去最高を記録するなか、貿易赤字は1月に4.3%増の526億ドルと、08年10月以来最大となった。
イタリアの高級ブランド、ジャンニ・ベルサーチなど国際的な企業はすでに恩恵を受けている。同社のフェラリス最高経営責任者(CEO)は今年の売り上げについて「欧州の1桁に対して米国は本当に力強い2桁のペースで伸びる」との見通しを示している。
イタリアのファッションブランド、プラダは3月29日、米国の消費支出に支えられ、1月31日までの1年間で百貨店売上高が増加したと発表した。通期最終利益は72%増の4億3190万ユーロとなり、アナリスト予想を上回った。
サイナイ氏は米経済が昨年の1.7%成長から今年は最大で3%成長となり、S&P500種株価指数も年末時点で1,500近辺まで上昇すると見込んでいる。

ホンダの伊東孝紳社長は1月、今年度の業績について「アコード」と「シビック」の北米での売り上げが好調なため、少なくとも過去5年間を上回ると予測。秋に予定しているアコードのフルモデルチェンジが売り上げに大きく貢献するとの見通しを示した。
独ダイムラーのツェッチェCEOは2月9日、「過去数カ月の状況に関する限りでは、米国が明るい材料であることは確かだ」と述べた。傘下のメルセデス・ベンツの米国での売り上げは2月に前年同月比17%増加した。一方で中国のディーラーは最大25%というこれまでにない大幅な値下げを行っている。
バークレイズの調査責任者、ラリー・カンター氏はリポートで米国で天然ガスが値下がりしていることによって石油高騰が経済に与える影響が弱まったと指摘。「これまでの景気回復は新興経済市場、実際には中国が牽引するものだった。米国はサイクルに乗り遅れていた。しかし現在の景気回復は明らかに米国主導のものだ」と述べた。
シカゴマーカンタイル取引所(CME)の主任エコノミスト、ブルフォード・パトナム氏は、米国の個人消費が完全に回復したと指摘。「米国経済は非常に良い状態にある。とてつもなく強いエンジンというわけではないが、世界経済の成長にとってプラスだ」と述べた。
IHSのエコノミスト、ナリマン・ベーラベシュ氏も「米国が成長エンジンになるとはいっても、かつてのような6気筒、8気筒ではなく、4気筒くらいだろう」と述べた。