貧すれば鈍する日本の電機業界

業績悪化に見舞われた日の丸電機メーカーのリストラの嵐が吹き荒れている。ソニーが10,000人規模の人員削減に踏み切ることを決めたが、パナソニックやNECなど大手が大規模リストラ実施を決めている。国内の雇用が失われるだけでなく、貴重な技術や頭脳の海外流出が懸念される。

ソニーの平井一夫社長は就任早々に大ナタをふるう。既に発表した化学事業売却や中小型液晶事業の分離による5,000人程度の削減に加え、国内外のグループの製品開発や生産、営業、管理などの幅広い職種を対象に5,000人規模の削減を上積みする。
経営責任を明確にするため、11年度の執行役7人全員が役員賞与を全額返上する方針としている。もっともハワード・ストリンガー会長の場合、ストックオプションを含め8億円超の報酬のうち、賞与は"たったの"5000万円にすぎないが。

テレビメーカー大手では、パナソニックがグループ従業員を10年比で35,000人削減を進め、シャープも労働組合に5月からの賃金カットを提案した。同社は人員削減については言及していないが、「業績が急激に好転しない限り、どこかの段階で人員削減に手を付けざるを得ないのではないか」(電機担当アナリスト)との懸念も残る。
テレビメーカー以外も厳しい。NECやTDK、リコーといった大手メーカーがそれぞれ国内外で1万人前後の人員削減を打ち出している。
人員削減が企業の収益改善策として有効な手段であるのは事実だが、次の収益の柱がない縮小均衡ではジリ貧に陥る恐れもある。

また、リストラを実施した場合、「優秀な人材ほど見切りを付けて社外に出て、"しがみつき社員"だけが残るという本末転倒の事態になりがちだ」(前出のアナリスト)との指摘もある。
この10年間、日本企業が行ったリストラで多くの技術者がサムスン電子などの韓国企業に流出し、結果的に韓国エレクトロニクス産業は世界の頂点に立った。そしていまは次の覇権を狙う中国メーカーが「日本の技術者に照準を定めている」(業界関係者)という。
日本の電機メーカーがよみがえる日は本当に来るのだろうか。