G20がIMFに多額の追加拠出も下振れリスク

20カ国・地域(G20)は国際通貨基金(IMF)の融資能力を拡大するため、4300億ドルを超える追加拠出を表明した。深刻化する欧州債務危機から世界経済を守るIMFの取り組みを支援する。

G20の財務相・中央銀行総裁は20日、ワシントンでの会議を閉幕。今回の追加拠出で、IMFの支援能力は2倍近くに強化された。英国とサウジアラビアなどが具体的な追加拠出を表明した一方で、ブラジルはIMFでの議決権配分の拡大を新興国からの支援の条件とすると主張した。
欧州の政策当局者らに対してはさらなる努力を求める声も出ているが、今回のG20の追加拠出表明は、2年におよぶ危機の収束に向けた欧州の取り組み強化への支持を意味している。ただ、スペイン債は週間ベースで、過去5年間では最長の連続下落となっている。

メキシコのミード財務相は「さらなる行動が必要だとの認識があった」と述べた。メキシコは今年のG20の議長国を務める。
G20の財務相・中央銀行総裁は世界経済について、「緩やかな回復」の兆候を示しているとの共同声明を会議後に発表。「下振れリスク」が引き続き存在するとした。
また、「欧州の金融市場の圧力も反映し、ボラティリティは高い状態が続いている」とし、「2012年の成長見通しは緩やかな水準にとどまっている」と続けた。
声明ではこのほか、原油価格の新たな上昇に「警戒」し、必要に応じて行動を取ると約束した。その一方で、産油国が十分な供給を約束していることを歓迎した。

IMFの緊急融資用財源の拡大はこの3年で2回目。IMFのラガルド専務理事は当初、6000億ドルの増額を目指していた。現在の融資能力は約3800億ドル。IMFは一部の資金を手元に留保する必要があり、実際に融資できる額は財源の総額を下回る。
欧州にまず自力での危機対応能力の強化を求めるなか、交渉は5カ月に及んだ。欧州は欧州中央銀行(ECB)による長期資金供給オペ(LTRO)実施や、域内のファイアウオールの規模を8000億ユーロに強化することなどの措置で応じた。
ドイツのショイブレ財務相は20日、「欧州は約束を果たしたということを十分な確信を持って世界に伝えることができる」と発言。「金融市場の信頼感の危機はまだ完全に克服していないが、すでに重大な決断が下された」と続けた。

G20はまた、欧州は自衛策を強化し、財政赤字を削減しつつ経済成長を支え、銀行を立て直すという両立の難しい目標を達成しなければならないと論じた。
増額分のうち、ユーロ圏諸国が1500億ドルを拠出。日本が600億ドルを拠出する。このほか英国と韓国、サウジアラビアはそれぞれ約150億ドルを拠出する。
大統領選挙の年に入った米国は追加拠出を拒否し、IMFの資金基盤は十分であるとしたほか、欧州に一段の自助努力を迫った。カナダも拒否。IMFは既にこれまで、ギリシャとアイルランド、ポルトガルの救済を支援している。
ブラジルと中国も拠出を表明しなかった。ブラジルのマンテガ財務相は財源拠出と引き換えに新興市場国のIMFでの発言権拡大を主張した。