気になるスイスフラン相場

スイスフラン相場に市場の注目が集まっている。
スイス国立銀行(SNB・中央銀行)が11年9月に自国通貨高を抑えるために設定した上限(1ユーロ1.2スイスフラン)を4月5日に一時突破し、欧州市場で1ユーロ1.1990スイスフランの高値をつけた。その後、SNBが介入し押し戻したものの、SNBは「上限を突破しようとする動きには無制限で為替介入し阻止する」と表明していただけに、首を傾げる市場関係者は多かった。
謎を解くカギは、スイスフラン取引の仕組みにある。UBSのチーフ為替ストラテジスト、マンスール・モヒウディン氏は「今回の上限突破は小規模な銀行同士の取引で起きた」と分析する。

大手金融機関は、スイスフランSNBと直接取引できるが、小規模の金融機関はSNBと取引できない。今回のケースは売り手金融機関のスイスフランが不足し、取引レートが高くなったというのが真相のようだ。
ただ、スイスフラン相場は年初からじりじり上昇してきた。上限を設定したヒルデブランド前総裁が、今年1月、夫人の不明朗な外為取引問題の責任をとって辞任し、政策変更の思惑が浮上。国際通貨基金(IMF)が3月、「中期的には変動相場制に戻すべきだ」との見解を示したことも上限撤廃観測を生んだ。

一方で、上限をさらにスイスフラン安の方向に変更するのではないか、との観測もたびたび浮上している。今月12日にも、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントのジム・オニール会長が「スイスフラン高圧力が続けば、SNBは上限を1ユーロ1.25スイスフランにするかもしれない」と発言したと報じられ、スイスフランが対ユーロで急落する場面があった。
日本の外国為替証拠金取引(FX)投資家は為替介入によるユーロ高スイスフラン安を狙っている。ユーロとスイスフランの通貨ペアを扱う東京金融取引所の「くりっく365」では、「ユーロ買い・スイスフラン売り」が圧倒的に多い。
思惑が入り乱れるのは、政策決定理事会の議事内容を公表しないなど、SNBの政策運営が外部からうかがい知れないためだ。突然、上限を設定した昨年9月6日はスイスフランが、対ユーロで1日に8%下落した。FX投資家は、証拠金倍率を低めに設定しておいたほうが賢明だ。