若い専業主婦が働きに出ると…

今日は公的年金、とくに厚生年金について考えてみたい。
あくまでも平均的なデータではあるが、男性と女性では公的年金の受給額と厚生年金への加入期間が極端に違う。
男性の場合、厚生年金の加入期間は「40年以上45年未満」が約294万3000人と最も多い。高校や大学を卒業した後すぐに就職して定年までの約40年間勤め上げるパターンのサラリーマンが多いからだ。
一方、女性は受給額100万円未満が全体の7割以上を占め、男性と比べて圧倒的に受給額が少ない。厚生年金の加入歴も、男性よりはるかに短い「5年未満」の層が約363万7000人と最も多い。

多くの会社員は「自分の年金はいくらか」には関心があるが、妻の額には興味を持たない。「夫の年金が柱で、妻の年金はプラスα」という考え方なのだろうが、それでは「年金受難の時代」は乗り切れない。
厚生年金加入期間が50年、55年とそう簡単に延ばせるわけではないので、夫の年金額は頭打ち状態である。一方で受給額も加入期間も少ない妻のほうは伸びしろが大きい。
つまり、今から受給額を増やすカギは「夫婦の年金額」にある。同じようなサラリーマン人生を送った同期入社同士でも定年後の年金生活が大きく違うことは珍しくない。妻の年金が5万円しかもらえなかったり、一方で15万円ということもよくあるからだ。今後は老後の生活を「夫婦2人の年金の合計」で支えるという発想に転換すれば、年金大幅アップの作戦が見えてくる。

「年金博士」こと社会保険労務士の北村庄吾氏が語る。
「サラリーマンの妻は第3号被保険者制度で国民年金に加入しているが、少しでも厚生年金に加入すれば受給額が格段に違ってくる。現在、国会で審議されている改正法案が成立すれば、パート主婦の加入要件も緩和される。今回の改正は年金改悪には違いないが、それを逆手に取れば年金アップのチャンスにもなる。」
妻の年金をテコ入れすれば生涯で1000万円プラスさえ夢ではない。
例えば現在53歳の妻が60歳まで7年間だけでいいから月給22万円で働いて、厚生年金に加入できたとすれば、65歳以降に受け取る年金額は月々約2万円(年約24万円)アップする(公的年金加入歴30年の場合)。平均余命の89歳まで生きるとすれば受給総額は約576万円増えることになる。もっと若い世代が長く働けば1000万円以上増やすことはそう難しくないのだ。