復興予算5年で20兆円も…

政府内で、東日本大震災の復興予算の拡大論が早くも浮上してきた。現在は11年度からの5年間で19兆円を見込むが、東京電力福島第一原発事故への対応など追加的な経費を視野に入れ、20兆円超に引き上げる方向だ。ただ、11年度の復興予算で実際に使われたのは約6割にとどまっており、予算をつけても執行が追いついていない現状がある。財源をどう確保するか、ハードルも高い。

「復興のフレームの19兆円を超える可能性が高くなってきた。新たな財源の調達をどうするか考えないといけない」。安住淳財務相は3日の閣議後会見で復興予算の拡大に言及した。
政府は昨年7月の復興基本方針で、当初5年で復旧・復興に必要な費用を19兆円と見積もり、すでに23年度の3度にわたる補正予算と24年度予算で約18兆円を計上した。財源は所得税などの復興増税のほか、政府保有株の売却収入などで何とかかき集めた。
安住財務相は「福島の問題でどういう予算措置をしないといけないかも出てくる」と指摘。原発事故で大きな被害が出た福島県の再生などに、追加の手当てが必要との認識を示す。

もっとも、こうした安住財務相の前のめりな姿勢とは裏腹に、復興予算の執行は順調とはいいがたい。11年度第1次-第3次補正予算で計上した14兆9243億円のうち、年度内に使われたのは6割の9兆514億円。4兆7694億円は12年度に繰り越し、残る1兆1034億円は使う見込みのない「不用額」として処理されることになった。
背景には、住宅の高台移転で住民の合意形成が遅れるなど、地元の調整や復興計画の策定などが想定通り進んでいないことがある。
日本総研の蜂屋勝弘主任研究員は「阪神大震災の時も、予算が効率的に使われなかったケースがあった。5年経って使い残しがあるかもしれないし、その時点で事業を評価し、必要なら追加の予算措置を議論すればいい」と、拙速な歳出拡大に疑問を投げかける。

復興予算を上積みするにしても、財源の手当てをどうするか-。安住財務相は、税収の上振れなどによる11年度決算の剰余金(1兆2301億円)を復興予算の拡大に充てる意向だ。だが、与党には、消費税増税に伴い、景気対策に回すべきだとの声もあり、剰余金の使い道をめぐる綱引きが予想される。
剰余金だけで足りなければ、さらなる復興増税なども検討課題に上るが、消費税増税も控え、国民の理解を得るのは簡単ではない。