財務省、外国通貨製造受注の営業へ

財務省は造幣局での外国硬貨の製造受注を目指し、アジアや中東の新興国に売り込みをかける。国内では硬貨の流通量の減少で製造設備に余力が出てきており、経済成長で需要増が見込まれる外国硬貨を製造し、有効活用する。利益の一部は国庫に納付し、財政赤字圧縮の足しにしたい考えだ。

財務省は9月から、ミャンマーやベトナムなど14カ国を訪問し、硬貨製造の受注獲得に向けた活動を展開する。これらの国はいずれも、自国に硬貨の製造設備を持っておらず、うちクウェートやアラブ首長国連邦など7カ国は、国際入札を通じて英国やカナダなどに製造を委託している。
また、ミャンマーやベトナム、カンボジアなど7カ国は現在、紙幣だけが流通しているが、財務省は経済成長とともに今後、硬貨の利用が進むとみて、情報収集する。
日本では、財務省所管の独立行政法人造幣局が東京、大阪、広島の3工場で1円-500円まで6種類の硬貨を製造している。だが、硬貨の製造量は、クレジットカードや電子マネーの普及で、ピーク時の74年の56億1千万枚から、11年には7億3800万枚に落ち込んでいる。

受注による利益は、半分を国庫に納付、残り半分を設備投資などに充てる。
受注金額は、1カ国当たり数億円の収入にとどまる見込みだが、経済成長とともに硬貨の流通量が増えれば、「中長期的には国庫を潤すことにつながる」(財務省幹部)と期待する。
日本が戦後、海外から硬貨の製造を受注したのは、日本との外交樹立60周年を記念して発行したニュージーランドの銀貨(07年)とスリランカの銀貨(12年)だけ。
今年7月には、バングラデシュが募った硬貨製造の国際入札に応じており、受注できれば一般に流通している硬貨では初めて。

偽造防止対策をはじめ、日本の硬貨製造技術は世界的にみても高い。自動販売機で偽造硬貨の被害が相次いだのを受け、00年には、五百円硬貨の材質やデザインを変更し、世界で初めて「ギザギザ」を斜めに刻むことに成功した。
ただ、新興国は、精巧な硬貨よりも、安価に大量生産できる硬貨を求める可能性もあり、「日本の高い技術力が必要とされるかは未知数」(財務省幹部)だ。