電力小売り全面自由化の方針示される

電力供給システム改革を議論してきた経済産業省の「電力システム改革専門委員会」は13日、家庭向けを含む電力小売りの全面自由化と、送配電部門の機能や組織を既存の電力会社から切り離す「発送電分離」を行う必要があるとの基本方針を示した。今後、詳細な制度設計を年内を目途に行う。

現状では小規模工場や中小ビルなど契約電力50kW以上の電力小売りは自由化されているが、家庭向けなど50kW未満の小売りは東京電力など全国10電力会社(一般電気事業者)が地域ごとに独占している。基本方針は「全ての国民に電力選択の自由を保証する」とした。例えば、大阪の一般家庭が中部電力や新規参入電力事業者(特定規模電気事業者=新電力)などから電気を購入することを制度上可能にする改革方針だ。全面自由化による競争進展を前提にするため、電力供給に必要な原価に基づき料金を設定する「総括原価方式」は撤廃する。

電力小売り自由化は00年から段階的に進められてきたが、新電力の市場シェアは自由化対象市場でも3%程度止まり。新電力の供給力が一般電気事業者に比べ圧倒的に見劣りすることが原因だ。このため、05年4月から取引が始まった卸電力市場(日本卸電力取引所)向けに一般電気事業者が供給予備力を超える電源を投入するといった対策を講じ、市場競争の活性化を促す。
発送電分離は、全面自由化による競争促進の実効性を上げるために送配電網の中立性と公平性の確保するのが狙いだ。分離の形態は、
1)機能分離型…各供給区域の送配電網の運用機能を一般電気事業者から分離し、新たに設立する広域的な系統運用機関に移管する
2)法的分離型…各電力会社の送配電部門全体を別会社化する
の2つに類型化した。

機能分離の場合も送配電網資産は一般電気事業者に残り、法的分離の場合は送配電網が別会社化されても一般電気事業者との資本関係は維持される。発電部門と送配電部門の資本関係を切り離す「所有分離」が最も踏み込んだ発送電分離の形態だが、今回の基本方針では「将来的検討課題」との記述に止めた。
これらの制度改革は電気事業法の改正が必要になるが、経産省の担当者は「法制化や法律改正に向けたスケジュールやめどは全く白紙」と説明している。