不祥事続きの野村、“第2の日興”危機

トップが首を差し出しても危機は終わらない-。増資インサイダー問題で野村ホールディングスは渡部賢一グループ最高経営責任者(CEO、59)ら首脳2人の引責辞任で幕引きを図る。しかし、金融界では自力再建を危ぶむ声は強く、メガバンクの軍門に下る日が近づいている。

 

「ナベケン(渡部CEO)が対応を誤ったのが致命的だった」と野村OBは憤りを隠さない。3月に増資インサイダーへの関与が発覚後、野村は当局と「徹底抗戦」の構えを見せた。証券取引等監視委員会による調査の窓口役となった担当役員の「非協力的な態度」や、現場の女性社員に責任を押しつけるような姿勢が、当局のいらだちを募らせた。

また、AIJ投資顧問による年金資産消失やオリンパスの巨額損失隠しなどの経済事件に、野村出身者がことごとく関与しており、「顧客の利益よりも営業成績を優先させるDNAが染みついている」と当局の怒りの火に油を注いだ。

野村を主幹事証券から外す「野村外し」が引き金となり、渡部氏も辞任を余儀なくされたが、次期CEOに就くのは子会社、野村証券の永井浩二社長。「渡部CEOの操り人形」(別の野村OB)と批判があるうえ、「インサイダーの当事者は野村証券。そのトップがなぜ責任を問われないのか」(証券筋)との指摘もある。

 

新体制になっても野村の再建は不透明だ。米リーマン・ブラザーズの部門買収など渡部氏が進めた海外事業の業績は低迷が続き、米格付け大手ムーディーズ・インベスターズ・サービスによる野村の長期債務格付けは「Baa3」と、投資適格の中では最低。あと一段の格下げでジャンク級となれば、資金調達のコストが急上昇する。「野村も大手銀行の傘下に入るしかない」(金融筋)と業界再編を予測する声も広がっている。「最有力候補は国内の証券分野を強化したい三菱UFJフィナンシャル・グループだ」(外資系証券アナリスト)。

「ガリバー」と呼ばれた野村もいまや株式時価総額は26日終値時点で約9900億円と、三菱UFJ(約5兆2096億円)の5分の1程度の規模。独立系証券という立場は厳しさを増している。