雇用統計の結果は真に受けていいのか?

週明け6日の東京外国為替市場で円相場は対ドルの安値圏で推移している。前週末発表の7月の米雇用統計で雇用者数の改善が確認され、米景気の過度な悲観論が後退したためだ。ひとまず円の先高観は和らいでいるが、一部では失業率の悪化を手掛かりに米連邦準備理事会(FRB)による追加金融緩和への思惑も出ている。評価を定めにくい「玉虫色」ともみられる内容だけに、持続的な円売りにつながる材料にはなりにくそうだ。

 

7月の米雇用統計を受けて欧米の株価は大きく上昇した。最大の注目点だった非農業部門の雇用者数が前月比16万3000人増と市場予想の10万人程度を上回り、米景気への悲観論が和らいだことが主因だ。一方、失業率は8.3%と同0.1ポイント上昇。雇用情勢の厳しさも示したことで「一部の市場参加者からFRBによる量的緩和第3弾(QE3)の可能性が声高に叫ばれた」(クレディ・アグリコル銀行外国為替部の斎藤裕司ディレクター)といい、投資家のリスク選好を後押しする要因とも受け止められたようだ。

 

外為市場でも円売り・ドル買いが優勢となり、投資家がリスク資産に持ち高を傾ける動きが垣間見えた。しかし、株式市場に比べると反応は限られた。米景気の腰折れ懸念がひとまず後退したことで、例年8月に進みやすいとされる円高についても「実現の可能性はだいぶ下がった」(みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト)との見方が出ている。一方、「追加緩和観測は払拭されていない」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作シニア為替・債券ストラテジスト)とすれば、円の下値余地は限られそうだ。

 

注目日程である雇用統計で明確な相場の方向感が出なかったことで、市場は改めて欧州問題に関心の度合いを高めそうだ。市場では2日の欧州中央銀行(ECB)理事会で問題解決への進展がみられなかったとして、ユーロに失望売りがかさんでいた。雇用統計後のユーロ相場の上昇は、積み上がっていた売り持ち高の一部が解消されたにすぎないという側面が否定できない。投資家が本格的なリスク選好に転じるにはなお時間がかかりそうだ。