夏枯れ相場の中での市場関係者の注目点

投資家の夏休みシーズンを迎え、東京株式市場で薄商いが続いている。前週6-10日に東京証券取引所第1部の売買代金が1兆円を上回ったのは2日間のみ。週明け13日午前も薄商いのなかで、株価は前週末終値をはさみ方向感の乏しい展開となった。売買の手掛かりの少ない「夏枯れ」相場では、市場関係者はどのような銘柄選択が有効と考えているのだろうか。

 

岡三証券日本株式戦略グループ長の石黒英之氏は、薄商いで全体の方向感が見通しにくいなかでは、値動きの軽い銘柄に資金が流れやすく、エニグモやワイヤレスゲートといった直近の新規上場銘柄や好業績の出た小型株などに引き続き物色が向かいそうだとみている。

高値圏にあり、割高感のあるディフェンシブ株に利益確定の売りを出し、売られすぎた景気敏感株を買う動きも続きそうという。小型の景気敏感株のなかでは、不二越NTN、プレス工業などの自動車関連にも注目。8月中にもエコカー減税が打ち切られる見通しであるなど先行きの不透明要因は残るものの、業績などのファンダメンタルズ(株価の基礎的条件)との比較では株価は相当な安値圏にある。しばらくは需給面からの買い戻しが期待できるだろうとみている。

ただ、景気敏感株の戻り一巡後は、内需・外需を問わず競争力や技術力などで優位性のある銘柄への資金流入が続くとみている。9月が近づくと、欧州安定メカニズム(ESM)の発足をめぐる欧州の動きなどで相場全体も振れやすくなりそう。中長期での投資を考える場合、内需の成長株が利益確定の売りに押される場面があれば押し目買いを入れる好機と考える。ジャスダック上場の低価格眼鏡チェーン、ジェイアイエヌウェザーニューズなど成長期待の高い銘柄は、安値では押し目買いが入りやすいとみる。

 

また、カブドットコム証券理事の臼田琢美氏は、薄商いで株価指数の値動きは鈍くなっているが、個別銘柄でみれば決算内容などを手掛かりにした売買が活発なものも多く、欧州情勢が小康状態を保つなか、予期せぬ株価下落のリスクは小さいうえ、長期金利と株式の益回りの比較でみた株式の割安感は依然として強いとみている。個別銘柄の業績や株価の動きを丹念に調べて仕込むにはいい時期なのではないかという意見だ。

目先の株価の戻りが期待できるのは、不安先行で株価が下げていたところへ4-6月期の好決算が出た銘柄や、決算直後は売りで反応したものの、内容を細かくみると今後の業績悪化の懸念が小さい銘柄などだ。好決算で戻り機運が高まっている銘柄としては、9日のディー・エヌ・エーの決算を受けて見直し買いが入っているゲーム関連株があげられる。中長期的な成長期待は強く、安値圏では買いが入りそうだ。

決算直後に売られた銘柄でも、今後業績が反転する期待があり、値持ちのいい銘柄には押し目買いが入りそうという。例えばニコンは8日に通期業績の見通しを下方修正した後、前週末までに8%下げたが、業績下振れの要因は主に為替の円高で、売り上げそのものは伸びている。株価も1月に付けた安値を上回る水準でほぼ下げ止まっている。同じ業種のキヤノンなどと比べ、株価の戻りは早そうだ。

ほかには9月にも発売されるとみられる米アップル社の新型iPhone関連銘柄にも注目しているとのこと。足元では新型機種の発売前の買い控えで、部品各社などの関連株も軟調な値動きが目立つが、新型機種の発表後は、新機種への部品搭載などの情報をもとに反転することもありそうだ。