問題山積のリオへバトンパス

17日間にわたって熱戦が繰り広げられたロンドン五輪が12日に閉幕し、五輪旗は4年後の開催地ブラジル・リオデジャネイロに引き継がれた。ただ、リオでは会場建設の遅れやインフラ整備、治安問題などの不安が解消されておらず、難題を抱えたままのバトンパスとなった。

南米最大で世界第6位の経済大国にまで成長したブラジル。3年前にリオが開催地に決定した際、五輪開催はブラジルにとっての通過儀礼として歓迎された。14年にはサッカーのワールドカップ(W杯)の開催も控え、五輪の開催はブラジルが長く夢見た先進国の仲間入りをアピールする絶好の機会となる。

しかし、開催地決定時の熱狂ムードは、今となっては不安が人口650万人の臨海都市を覆っている。

施設建設の遅れ、膨らむ予算、混雑する空港・道路・地下鉄。リオ市民は、リオがロンドンのような開催を目指すのであれば、そのゴールはまだまだ遠いと感じている。

ブラジル観光省は、外国人観光客40万人のほか、国内からも数十万人が五輪観戦に訪れると見込んでおり、空港やホテルの混雑解消など、インフラ面の問題解決に向けた道のりは険しいままだ。

 

また、五輪の開催コストが急騰しているのも問題の一つ。それは、投資ブームに加え、高い税金や人件費によって、建設機械からココナッツまであらゆるものの価格が上昇しているため。専門家らは、当初設定された総事業費290億レアル(約1兆1300億円)を大幅に上回る可能性もあると指摘している。

五輪旗を携えて帰国したリオのエドゥアルド・パエス市長は13日、予算の変更はまだないと発言。スポーツ省の幹部も「五輪予算はすべての準備が整ってから公表する。建設される会場などについては、注視しなければならない要素もある」と述べるにとどめた。

現在の段階で準備が完了しているものはほとんどない。国際オリンピック委員会(IOC)のメンバーが6月に視察した際には、「スケジュールはすでにきつくなっている。解決すべき課題はかなり多い」と、準備不足に懸念が示された。

IOCが最も問題視しているのは、試合会場の大半とメディア施設が入るオリンピックパークの建設が始まっていないこと。これに対し、パエス市長をはじめ関係者は楽観的で、リオ五輪組織委員会のレオナルド・グリナー最高責任者も先週、すべての競技会場が15年までに余裕をもって完成すると強調した。

 

治安問題も五輪準備に追い打ちをかける。五輪会場をつなぐ道路や鉄道は、市南部の郊外に建設が予定されているが、それはリオ郊外で最も貧しい住民が暮らすスラム街を通過する。

500世帯が暮らすファベーラと呼ばれるスラム街、ビラ・アウトドローモの住民は、五輪計画によって立ち退きを迫られる数万人に含まれている。

治安当局による取り締まりによって、多くの地区で犯罪は減少傾向にある。それでも、状況が改善されているのは、五輪関連のイベントの大半が行われる海岸沿いの地域に限られ、問題は元々平穏だった地区に移行しつつある。

ロンドンから多くのことを学んだと語るグリナー氏。「(ロンドンの成果を)われわれのチームにも取り入れていく。われわれは、準備プロセスを改善しているところだ」と強気だ。

一方、専門家からは、先進国の都市から基本的な公共サービスが行き届いていないような都市に持ち込めるものは、わずかしかないと厳しい意見が聞こえる。

リオとサンパウロを結ぶ高速鉄道の計画も大幅に遅れが出ており、五輪に間に合わない状況だ。さらに、リオ市内の宿泊施設は五輪用に1万部屋追加されてもまだ足りず、クルーズ船の活用も計画されている。

南米初の五輪開催決定で熱狂の渦に包まれたリオデジャネイロ。難題山積のまま4年のカウントダウンが始まった。